佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 劇団チョコレートケーキ 法廷劇二本立て 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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劇団チョコレートケーキ 法廷劇二本立て

「挑戦」したチョコレートケーキ。
最近のチョコレートケーキは大変真面目で熱く面白い。しかし、今回はその熱さにチョコは融けてしまったようだ。大きな期待をもって出かけたが結果はイマイチだったというのが正直な感想。もちろん今回のテーマが「挑戦」であり、その意欲は高く買わなくてはいけないと思う。しかし、「12人の怒れる男」では、怒りの種類が感情を激高させて怒鳴り合うというのばかりが目につく。もっというと、登場人物12人の中で起きるドラマの演出がほとんどされてなく、登場した人物たちが、最初の設定のまま仕方なく態度を変えて行くというのが余りにも多い。実はこんな人、陪審員の中でこういうドラマが起きたというのが余りにも少ない。
 こういう芝居は語っている人も大切だが、それ以上に大切なのが、それを聞いているリアクションだ。もうひとつ言えるのは、出演者に名作に対して畏怖の念が強すぎて…とまでは言わないが、いつもは現代口語の自然な演技をする人までが、キャラクターを作り上げ、「演技」することに熱をあげていたよう思う。もちろん、原作は素晴らしいし、この作品を取り上げたことも賞賛だが、全員が同じ色の同じようなスーツ。年齢もほとんど同じ俳優で、例えばポーランド出身であるとか、ニューヨークでの生活とか、そういうものが浮かび上がって来ない。時代背景のこともあれでは全く分からないと思うのだ。 さらに言うと、これを第二次世界大戦から10年もしていないアメリカのニューヨークでの芝居という意識があまり感じられないのだ。そして、堅物な有罪だと主張する人間=困った人、疑問を呈する人=いい人の図式の演出にもちょっと如何なものかと思った。
 特に最後に、あれは第何号だったか。我が子の写真を破ってしまうシーンがあるのだが、それをそのままにしてしまったのだ。我が子への愛憎が憎さだけになってしまうという意図があっての演出なのか?疑問が残る。特にあの当時の写真の高価さをもう少し意識してもらいたい。
 いろんなことを書いたけれども、それはこの劇団への思いからということも分かってくれると嬉しいな。
 「裁きの日」は最近冴えている古川の台本に問題点が多くあった。裁判員制度のことについてきちんと研究/調査をしたとは思うのだが、裁判員制度においては、裁判員が直接、被告や証人に質問をすることができるという、陪審員制度と決定的に違う部分がある。その前提からすると、裁判員がおよそ会話することが考えられない「怒れる12人の男」のような謎解きや推理はあり得ないのではないか。それは法廷でクリアにすることが求められるからである。また、裁判員に守秘義務のことを語るが、裁判員がメディアのインタビューに応じる事もあることはどういう風に考えているのだろう。そういった裁判員制度の矛盾点や、制度では起こりえない事柄が散見されて残念だった。私は新聞などを通して知ってるだけだが、そういう素人が知っている事は抑えておくべきだろう。そして、芝居のほとんどが、死刑制度や裁判員制度についての討論に使われたのも残念。つまり、被告についての討論でなく一般論なのだ。
 私の誤解もあるのかもしれないが、こういう芝居のルールとして、先ずは裁判員制度の特徴や知っておかなくてはいけないルールを芝居の冒頭や前半にに説明するのが鉄則だ。また出演者のキャラクターが動かない。ドラマが起きないのも残念。次回作に期待したい。
2011年6月1日「12人」3日「裁きの日」 ギャラリールデコ

風琴工房「赤き深爪」
作・演出 詩森ろば 出演 浅野千鶴(味わい堂々)葛木英(ehon)園田裕樹(はらぺこペンギン!)佐野功 他
 上演時間1時間。ドラマの本質である児童虐待のシーンを目の前では見せないで、起きた事、思う事をほぼ全て思いを吐露して芝居を構成している。説明台詞と心の吐露の長台詞が延々と続く。劇中で、唯一ある児童虐待のシーンと言えるところが、花束で子どもの頭を叩いたシーン。花はルデコの無機質な床に飛び散り、それはそれは美しいシーンだった。非常に皮肉な感じがした。役者としての葛木英がこんなにいいとは思わなかった。

2011年5月27日 ギャラリールデコ
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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