自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
振付/ケネス・マクミラン
音楽/ジュール・マスネ
美術/ピーター・ファーマー
指揮/マーティン・イェーツ 東京フィルハーモニー交響楽団
マノン:サラ・ウェッブ
デ・グリュー:コナー・ウォルシュ
レスコー:古川和則


「サラウェッブの完成度の高いダンス、そして、ダンサーを観るにつけ」
完成度の高い上演であった。僕は音楽が好きなので、どうしてもオーケストラの話になってしまうが、正直いって、このマスネの曲はバレエのための曲であり、単独できいたらきっと退屈だろうと思う。それはきっと演奏している側もそうなのだ。それが、やはり日本でトップのオペラ・バレエオケ、東京フィルハーモニー管弦楽団だけあって、素晴らしい演奏を聴かせる。弦、管楽器、そしてバレエだけにとても大切な打楽器も、見事な水準である。10年前のロイヤルオペラのオケに聞かせたい。踊り手に高い踊りでなくては、音楽に負けてしまうと鼓舞させるほどの演奏だ。今夜のバレエの水準を高めた大きな要因である。
美術も衣装も特に工夫をこらしたというわけではないが、美しく必要なものは全て揃っている。オペラでも演劇でもないバレエの空間を見事に提示した。それも、舞台転換の早いこと。いろいろと考え抜かれたプロの仕事である。
さて、踊り手では先ずは客演のヒューストンバレエからのサラウェッブが見事である。技術、そして、プリマに必要な華もあり、人生の中での有頂天亜時期から落ちぶれていく様まで見事な演技である。コナーウォルシュの技術、演技力も高く素晴らしかった。二人のパドトゥなど難易度の高いダンスも危なげなく、きちんと演じながら踊ったのは見事だった。
そして、Mジェロモンのトレウバエフ、レスコーの古川も良かった。前者は演技がよく、後者は技術があった。古川はもう少し背が高かったらトップダンサーになれたろうに、あの背の高さであの跳躍力のある筋肉をつけた肉体だと、太ももが以上に太く見えてしまってずんぐりむっくりになってしまう。可哀想になあと思ってみていた。ソリストやデミソリストはいいのだが、時々、何かやっつけ仕事のコーラスも観られてそれが残念。5年ほど前には消滅したのかと思ったらひょっこり出てきた。
新国立劇場のバレエ部門は多くの日本人に役柄を与えようと日替わりのキャストが多い。これが良くない。トップダンサーたちが、しのぎを削って少数の役を奪い合って欲しい。それでないと、きっと客演のダンサーに勝てない。
つまり、今のような日本人キャストABC+客演みたいなキャスティングではなく、日本人キャストVS外国人キャストでいいのだ。そして、あとは、アンダースタディに泣けばいいのである。そうでないと、もっと殺気立った現場にならない。悪平等主義は芸術の発展にとって最も良くないものだ。
今回の華は圧倒的にサラウェッブ。ひとりだけ飛び抜けていた。
2012年6月26日@新国立劇場オペラパレス
音楽/ジュール・マスネ
美術/ピーター・ファーマー
指揮/マーティン・イェーツ 東京フィルハーモニー交響楽団
マノン:サラ・ウェッブ
デ・グリュー:コナー・ウォルシュ
レスコー:古川和則
「サラウェッブの完成度の高いダンス、そして、ダンサーを観るにつけ」
完成度の高い上演であった。僕は音楽が好きなので、どうしてもオーケストラの話になってしまうが、正直いって、このマスネの曲はバレエのための曲であり、単独できいたらきっと退屈だろうと思う。それはきっと演奏している側もそうなのだ。それが、やはり日本でトップのオペラ・バレエオケ、東京フィルハーモニー管弦楽団だけあって、素晴らしい演奏を聴かせる。弦、管楽器、そしてバレエだけにとても大切な打楽器も、見事な水準である。10年前のロイヤルオペラのオケに聞かせたい。踊り手に高い踊りでなくては、音楽に負けてしまうと鼓舞させるほどの演奏だ。今夜のバレエの水準を高めた大きな要因である。
美術も衣装も特に工夫をこらしたというわけではないが、美しく必要なものは全て揃っている。オペラでも演劇でもないバレエの空間を見事に提示した。それも、舞台転換の早いこと。いろいろと考え抜かれたプロの仕事である。
さて、踊り手では先ずは客演のヒューストンバレエからのサラウェッブが見事である。技術、そして、プリマに必要な華もあり、人生の中での有頂天亜時期から落ちぶれていく様まで見事な演技である。コナーウォルシュの技術、演技力も高く素晴らしかった。二人のパドトゥなど難易度の高いダンスも危なげなく、きちんと演じながら踊ったのは見事だった。
そして、Mジェロモンのトレウバエフ、レスコーの古川も良かった。前者は演技がよく、後者は技術があった。古川はもう少し背が高かったらトップダンサーになれたろうに、あの背の高さであの跳躍力のある筋肉をつけた肉体だと、太ももが以上に太く見えてしまってずんぐりむっくりになってしまう。可哀想になあと思ってみていた。ソリストやデミソリストはいいのだが、時々、何かやっつけ仕事のコーラスも観られてそれが残念。5年ほど前には消滅したのかと思ったらひょっこり出てきた。
新国立劇場のバレエ部門は多くの日本人に役柄を与えようと日替わりのキャストが多い。これが良くない。トップダンサーたちが、しのぎを削って少数の役を奪い合って欲しい。それでないと、きっと客演のダンサーに勝てない。
つまり、今のような日本人キャストABC+客演みたいなキャスティングではなく、日本人キャストVS外国人キャストでいいのだ。そして、あとは、アンダースタディに泣けばいいのである。そうでないと、もっと殺気立った現場にならない。悪平等主義は芸術の発展にとって最も良くないものだ。
今回の華は圧倒的にサラウェッブ。ひとりだけ飛び抜けていた。
2012年6月26日@新国立劇場オペラパレス
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
HP:
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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