佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 劇団新派 華岡青洲の妻 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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有吉佐和子 作 戌井市郎 齋藤雅文 演出

出演 水谷八重子 三田村邦彦 波乃久里子
丹羽貞仁/瀬戸摩純/井上恭太/甲斐京子

以下松竹のHPより
見どころ
医学の世界を舞台に、華岡青洲への愛をめぐる嫁・加恵と姑・於継。
女同士の争い、苦悩を描いた紀州華岡家、「家族の物語」。

この初夏、新派は有吉佐和子不朽の名作『華岡青洲の妻』を上演いたします。
世界初の全身麻酔手術を成し遂げた実在の名医「華岡青洲」成功の陰には、嫁姑が競って人体実験を望んだ女同士の”壮絶な戦い”があったというエピソードを有吉佐和子が劇化した名作です。昭和四十二年の初演以来、錚々たる俳優たちが演技の火花を散らし、上演が重ねられて参りました。

出演は姑・於継を初役で挑む水谷八重子、嫁・加恵に昨年紫綬褒章を受賞した波乃久里子、そして華岡青洲には新派初登場のゲスト三田村邦彦を迎えます。三人の熾烈な三角関係は見逃せません。また、藍屋利兵衛には新派四度目の舞台に挑む丹羽貞仁、米次郎・小陸には、新派次代のホープとして期待される井上恭太と瀬戸摩純が挑戦し、於勝役には甲斐京子という最高の配役が実現いたしました。

日本演劇史上屈指の名作と新派の新たな出会いよる極上の舞台にご期待ください。

【あらすじ】江戸時代中期、天明の頃。紀州の名門・妹背家の娘・加恵が隣村の貧乏医者、華岡家に嫁いできた。花婿の青洲は三年前から京都で医学の修業の身。花婿のいない祝言ではあったが、加恵は満ち足りていた。なぜなら、加恵は幼い頃に評判の気品のある於継を垣間見て憧れをもっていたので、理想の女性としていたその於継から直々に嫁にと望まれて、この上ない幸福を感じていたからだ。加恵は華岡家の人となるよう励んだ。於継も嫁の加恵を大事にして、その睦まじさは人も羨むほどであった。ところが、青洲が京都より帰郷すると、その様子は一変し、青洲をめぐり姑と嫁の凄まじい女の争いが始まった。
そうした女の感情には無頓着な青洲は医学の話に夢中で、門弟の米次郎たちとともに麻酔薬の研究や癌の手術などに没頭し、紀州きっての名医といわれるまでになった。研究も進み麻酔薬の完成には、人体実験を残すだけになると、於継と加恵は競って実験に身を捧げようと言い出した―。

「長い歴史で作り上げた21世紀平成の於継」
 「華岡青洲の妻」を新派で観た。僕は80年代に小劇場に行かなかった理由のひとつが、この芝居を文学座の杉村春子の舞台で観たことが影響しているのは間違いない。小劇場の役者は勢い良く動くけれども何を言ってるのかさっぱり分からない。芝居なのに台詞を大切にしないとは!と思って行かなかったのだ。文学座には芝居の大切なもの、それがちゃんとあった。青洲役には、北村和夫や高橋悦史、妻の加恵役は太地喜和子や新橋耐子で2−3回観ている。細かい筋なんか全く覚えていないのに、強烈な印象だけが僕の心に残っていた。
 10年ほど前に新橋演舞場で新派を観た後、全く観て来なかった。それが、この2年余り、ちょこちょこ観ている。どれもこれもが質が高くて面白い。メインを張る俳優の役者力、劇団としてのアンサンブル力、美術などもスゴく気を使っていてチケット代がちょっと高いのがたまにキズだけれども、こういう芝居を見せてくれるところが日本でほとんどなくなってしまった。
 和物に関して言えば、文学座でさえ、ものすごく減ってしまったから。
この芝居は元々は山田五十鈴さんで始まった芝居。それが杉村春子さんが演じたことによって、杉村さんのものになってしまったという不思議な芝居。杉村さんが亡くなったあとに、山田さんが演じたのだが、それを観ていないのをとても後悔している。昔の女優はいいねえ、本当に花があるし、可愛いし、ね。
 文学座で10年ほどまえに再演をやるという時には、全く興味を示さなかったし、池内淳子さんでの再演も、結局いかなかった。それが今回新派でやるときいていいかもと思ったのはこのところの新派は、観るもの観るものが全部当たっているからだ。日本橋、良かったね。東京物語、なるほど、こうしたか!スゴいね。大つごもり、いいねえ、年末にこんな芝居を見られるのは幸せだね。今年一年何とか生きれたことの感謝で終われるね、、、という具合。

 幕が上がったら、客席が紀州の空気になっていった。

 機織りの音をきいて、ああ、そうだった、そうだったと思い出す。

 紀州の言葉を聞いて、ああ、そうだった、そうだったと昔の舞台が蘇る。

 水谷八重子さんの於継は、これ、当たり役になると思う。
杉村春子さんのアプローチとちょこっと違う感じがする。杉村さんは、妻、加恵に対する嫉妬を露に出した、姑のイジメを隠すことなく出していた感じがする。分かりやすいと言えば、分かりやすい。
 それに対して、水谷八重子さんのそれは、もっと現代的。もちろん加恵に対する嫉妬もあるんだろうけど、それ以上に、華岡の家のこと、母親と息子の愛情とその関係がものすごく大切で、それらを少しも崩させまいとするアプローチによる演技だ。嫌な人でも悪役でなく、自然にそういう風になり、それが嫁の関係に影響してしまったという具合。意地悪で生きているのではなく、真面目に誠実に一生懸命生きてるだけ。これ面白い。
 人体実験されて、寝て、足をばたんと、布団をはだけるところとか、可愛いのだ。ユーモアがあるというか。加恵も、無碍に敵意を出しにくい存在なのだ。
 上演史を調べてみたら、水谷八重子さんは、水谷良子時代などに、加恵の役を杉村さんとも、山田五十鈴さんとも、淡島千景さんとも(この於継も観たかったな!)競演している。そういう名舞台を同じ舞台で見続けてきたからこそ作り上げることのできる名演技。長い歴史の末に作り上げた21世紀、平成の於継を作り上げた。
 そして、波乃久里子さん!ウマい!ちょっと若妻には見えないが!
 加えて感心したのが瀬戸真純の小陸。そして米次郎と於勝。文学座の芝居を見たときは若かったから分からなかったのかもしれないが、この芝居の二重構造の一端を見事に担っていた。僕は井上恭太という俳優は姿も演技もうまいが、口跡で時々舌足らず、音がこもるなあと思っていたのだが、今回はそれも見事に克服していた。大したものである。こういう基本的なことをきちんと克服することに挑戦しない俳優ばかりを観ているから。 

 きっといつの日か、瀬戸さんの加恵、井上の青洲で上演する日も来るだろう。それが楽しみだ。波乃さんは?って、僕は秘かに水谷八重子さんとともに、ダブル於継での競演を楽しみにしています。2012年6月22日@三越劇場
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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