佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 劇団HOBO ナイアガラ 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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作演出/おかやまはじめ
出演/おかやまはじめ 省吾 林和義 古川悦史 本間剛 西條義将(モダンスイマーズ) 喰 始(WAHAHA本舗)


推せん!喰始の演技は必見。見事なできに満足度高し」
 俳優おかやまはじめのドヤ顔は、小市民の中年男が何とも情けない顔で下から相手の顔色を伺う顔。何とか笑顔でごまかそうとする顔。もはや日本の俳優陣の中でも最高峰のドヤ顔をする。それがラッパ屋の舞台にかかせないものであることはファンなら誰でも知るところだし、おかやまさんが朝ドラなどにレギュラー出演していて、あんまり台詞がなくても、画面におかやまさんがいて芝居をしているだけでも、見るものに安心感を与える。ものすごい存在感だ。威圧感のない透明な空気感の存在感なのである。
 そのおかやまはじめが名うての俳優とはじめたHOBO。初見である。きっと鈴木聡さんの6掛けくらいで見ればいいのかな?と失礼ながら思ってでかけてみたら、全く違った。選曲のセンスは鈴木さんのジャズの影響を強く受けているし、演劇に対する真面目さも同じだが、作品はコメディでも作風は違って、ペーソスたっぷりの小粒の真珠の様、だった。
 新宿の中年ホームレスの話である。よくありがちな設定だ。その日々のできごと、人間模様、出会いと別れ。何かを諭すわけでもなく、嗚咽してみるような作品でもなく、ほんわかさせてくれる作品。こういう作品を見ると、普段の生活の普段に人間関係のありがたさ、そこに見いだすべき価値観を再認識もさせてくれる。もちろん、ちょっと言いたいことはある。例えば、江戸弁(例の「ひ」と発音ができない)でうまく話せないと言うことをあのタイミングで何回も繰り返したりすることは不要だし、芝居じみていて、せっかくのテンポが落ちてしまう。暗転の多用も如何なものか?選曲にひと工夫あっていいのではないか?とあるけれども、どれもこれもが好みの部類のことなので、それは人によっていろいろと感想が違うだろう。
 
 この作品を推す理由はストーリーや本の魅力だけでない。芝居の魅力に満ちているからだ。それは、この作品では役者の魅力ということでもある。おかやまさん自身はバイプレイヤーに徹しているが、5人のメンバーは出色の出来。とくに省吾(初見)という人は、無骨な線を崩さずに淡々と演じながら人間の善の部分をにじませるという名演をする。林和義さんは名優としてすでに確立した評価があるけれども、このふかい味わいはなんだろう。元文学座の名うての演劇人、古川さんも他の芝居とはレベルの違う演技を見せる。芝居を細かく丁寧に演じきっているのにリアル感を失わない。こうした新劇の俳優が少なくなった。演劇の深さを感じさせてくれる。本間剛も小劇場を中心に活躍した俳優だが、名うての俳優の中でギアがかかって、いつもにもまして芝居魂を感じさせる。
 
 この芝居の注目点で忘れてならないのは、おかやまはじめの演出力である。
それは、前述したおなじみの俳優たちがいつもより格段の演技をみせていることでも明らかだ。さらに、客演のふたりがものすごいことになっている。先ずはモダンスイマーズの西條。見事である。いつもの守備範囲としている役柄と違うキャラの役柄を見事に演じていた。もっと言わせてもらうと別人のようなのである。おったまげた。西條という人は俳優としては、むしろ不器用な高倉健タイプかと思いきや違った。
 しかし、それ以上に出色なのが、ワハハ本舗の喰始である。出色、出血、出欠、いや、驚愕。どういう表現を使えば伝わるだろう。メチャおったまげた。ワハハの演出家はこういう芝居ができるのか!演劇人が目指すべき理想の姿がそこにある。僕は芝居に出してもらうといつも思うのは昭和の名優である。例えば、加藤大介、例えば、伊藤雄之助、例えば、志村喬、例えば、佐分利信。目標は高く、ああいう存在を目指したいといつも思うのだ。もういなくなった。素晴らしい俳優の中の俳優。
 何もしなくても常に何かを放ち続ける俳優。いまのテレビや映画の俳優のつまらないこと(失礼)と思っていたら、ここにいた。タベハジメ!素晴らしい。圧倒的。「アー」といったり、息をしたり、呼吸をしたり、まばたきしたり、視線を変える。台詞のひとつひとつの、発声、呼吸、ポージング、アクセント、アクション。何から何まで完璧なそして魂の入った見事な演技を見せる。そして、観客をおかやまはじめの造り上げる世界に一気に引き込むのである。ああ、見事。初見であるが本当に本当に驚いた。僕はこれから、どういう演技ができるようになりたいか?と問われたら、喰始さんのような、と、子供が夢を語るように言うかもだ。ワハハ恐るべし。あんな演出家に演出されるのか。大変だ。
 
 つまり、本もいいし、俳優は魅力的、さらに演技も見事。これこそ、観に行くべき芝居である。最近つまらない芝居ばかりだったので、本当に嬉しかった。2012年9月6日@下北沢駅前劇場
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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