自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
2012年9月定期
アンドレプレヴィン指揮
NHK交響楽団
Aプログラム マーラー作曲 交響曲第9番
プレヴィンのマーラー観をN響は見事に受けとめ演奏した
さあ、2012年〜13年のシーズンが始まった。愛するN響の定期で始まる。
去年が歩行器での登場だったが、今年は杖と介助の人に腕を借りながらの登場。昨年は素晴らしいものの、時おりアンサンブルが乱れた演奏だった。祈る様な思いで客席で最初の一音を聴いた。そして懸念は的中。ブラスセクションはミスが目立ち、弦のセクションもいつものN響ではない。しかし、だんだんと持ち直す。そして、2楽章以下は今まで聴いたことの無い様なアンドレプレヴィンのマーラーが立ち上がった。
そこには、アンサンブルや合奏の、そして、音楽の美しさはあるけれども、いわゆるマーラー節はない。よく言われる死への憧れと恐怖もない。
むしろ、もっと達観した音楽だけに向き合う世界があった。いつものマーラーの演奏は内面をさらけ出し、叫び泣きわめく。そういう思いは全て表現の向こう側に押し込んでいた。4楽章のビオラやバイオリンの、チェロのソロの美しいこと。弦の合奏の見事なこと。ブラスセクションの抑制のきいた見事な世界観はプレヴィンそのものなのだ。音楽は生き生きと跳ね、唄い、光り輝いていた。
2012年9月15日(土)@NHKホール
Bプログラム モーツァルト作曲 交響曲 第1番
交響曲 第41番 「ジュピター」
ハイドン作曲 交響曲 第102 番
「至福」
僕がこれだけN響に肩入れするようになったのは、プレヴィンのモーツアルトを聴いたときからだった。N響から醸し出される音楽は、自我を排した音楽の前に何も飾らず、しかし必要なものは全てある音楽のように思えたからだ。
日本のオケは素晴らしい。しかし、例えば、ドイツ語にウムラウト、フランス語に巻き舌やアとマの間の音があるように、欧州音楽に必要な肝というものがある。それがあることによって、より本物に近づくというか。
それをプレヴィンはN響で表現してくれたのだ。
今宵音楽をきいていて、残響のいいサントリーホールのひとつひとつの音がまろやかに、消えて行く瞬間瞬間を心から楽しんだ。そして、プレヴィンが来てからN響に、決して自我を出して、モーツアルトやハイドンの作った、いや音楽そのものが持つ美しさに何か付け足して自我の痕跡を残すようなことをしないプレヴィンの音楽である。それは、まったく普通である。しかし、その普通がなかなかないものなのだ。至福の時間を過ごし、プレヴィンの健康が続き、またこの至福の時間を聴く機会があることを心から祈るのであった。
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佐藤治彦 Haruhiko SATO
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男性
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演劇ユニット経済とH 主宰
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演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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