佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 メトロポリタンオペラ ニーベルングの指輪 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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「ラインの黄金」
CAST Conductor: Fabio Luisi
Freia: Wendy Bryn Harmer
Fricka: Stephanie Blythe
Erda: Patricia Bardon
Loge: Stefan Margita
Mime: Gerhard Siegel
Wotan: Bryn Terfel
Alberich: Eric Owens
Fasolt: Franz-Josef Selig
Fafner: Hans-Peter König

「ワルキューレ」
Conductor: Fabio Luisi
Brünnhilde: Deborah Voigt
Sieglinde: Eva-Maria Westbroek
Fricka: Stephanie Blythe
Siegmund: Stuart Skelton
Wotan: Bryn Terfel
Hunding: Hans-Peter König


Production: Robert Lepage
Associate Director: Neilson Vignola
Set Designer: Carl Fillion
Costume Designer: François St-Aubin
Lighting Designer: Etienne Boucher
Video Image Artist: Boris Firquet

「観客が求めているのはルパージュではなくワーグナーではないのか?」
 ロバートルパージュは光と影の魔術師といったフレーズで語られるいま注目の演出家である。シンプルな舞台で、今回は三角形の縦横無尽に稼働するオブジェに照明やビデオ撮影されたものを投影することによって瞬時にして場所を移していく。アイデアは面白い。しかし、ワーグナーのこの巨大なオペラには、アイデアがちょっと煩かった。特にこのようなモダンな演出をするのなら、美術やセットだけでなく、衣装なども含めて徹底して欲しかった。衣装も演技も神話の世界そのままで、美術だけがモダンなのである。
 時には吊り下げられながら、時には身体の平衡を気にしながら、坂道を移動しつつ唄い演技をしなくてはいけない歌手たちが少々可哀想だった。歌と演技以外に歌手にかかる肉体への負荷が大きすぎる。
 もちろん現代最高のワーグナー歌手たちの歌唱は素晴らしかった。
 気になったのはファビオルイジの指揮するオーケストラだ。もちろんニューヨークのインターナショナルなオケがやっているわけだけれども、ちょっと音色が明るすぎた。ワーグナーだから重く暗い音が聞こえて来ないと認めないのか?と言われると全くそうではないのだが、きっと私の思った事は、歌手たちの演技だけが神話の世界で、美術もオケも現代そのものだったことによる引き裂かれ感に戸惑ったのだと思う。それにしても、古いと言われるだろうが、メトロポリタンオペラが1980年代の終わりから20年あまり使ってきたオットーシェンクの演出が懐かしい。あのギュンタージームセンの美術がもう一度見たい。歌手たちの演技は、そこに留まっていて、そこで唄いたかったとどこかで思っているように思えた。

 僕のそういう思いもあるからかもしれないが、どうしてもルパージュの演出は自己主張が強すぎるというか、自分のしたいことをするために他のものを相当犠牲にしすぎているように思えてならない。そして、ワーグナーのオペラにとってその感性が邪魔に思える。オペラの演出は、あくまでも音楽そのものへの奉仕でなければならない。これが僕の考え方だ。
 ルパージュは、観客が先ず第一義にワーグナーを求めてきていることを忘れてはいないか?ルパージュは自分自身を魅せる事を第一に作っているのであれば、それは傲慢というものである。

「ラインの黄金」2012年4月4日@ニューヨーク メトロポリタンオペラ劇場
「ワルキューレ」2012年4月13日@ニューヨーク メトロポリタンオペラ劇場
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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