佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 ダンスアクト ニジンスキー 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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出演/東山義久/安寿ミラ/岡幸二郎
遠野あすか/舞城のどか/佐野大樹 ほか
脚本・演出 /荻田 浩一 音楽/斉藤恒芳 振付/平山素子/港ゆりか

「東山義久はスゴいのである」
 東山義久の身体能力はものすごい。オーラもスゴい。冒頭から圧倒された。それは車いすに乗り動かないときからも抜群のオーラも発していた。もう何年も前からダンスグループのダイヤモンドドックスの噂は聞いていた。機会があって今回、そのリーダー格の東山義久の出る舞台を観る事ができた。東山と4人のダンサーが出ているのだが、平山素子の素晴らしい振付けもあって、ダンスシーンはものすごく舞台の密度が上がる。冒頭から、ドビッシーの「牧神の午後への前奏曲」が流れ、東山も角をつけていたので、なるほど!と思った、が、この舞台脚本が良くなかった。例えば、バレエリュスという言葉が出てくるが、これが、ロシアバレエのことを意味する事をどれだけの観客が知っているだろうか?フランス語を勉強した人は別として、ね。しかし、それはキーワードなのである。稀代の興行師ディアギレフとニジンスキーの同性愛のことや、ニジンスキーが舞台上でオナニーをして注目を集めたといった下世話なことばかりに焦点が当てられる台本は本当に酷かった。
 そんなのキモイぜよ!
 せっかく東山義久がニジンスキーを演じるのだから、先ずは彼の振付けの代表作である「牧神の午後への前奏曲」を東山に踊らせるべきだし、それ以前のロシアバレエとの違いを明確にするためにも、以前のバレエも東山に踊らせるべきである。
 もちろん平山素子の素晴らしい振付けも面白いし必要なのだが、ニジンスキーに肉迫するためには、ニジンスキーの本質であるダンス革命を「出演者のモノローグで説明するのではなく」見せてしかるべきだろう。それを、普段はクラシックバレエを踊らない東山が踊るから面白いのだ。そして、この男なら踊ってみせるだろう。東山義久にとってもせっかく挑戦する座長興行だ。普段のチームで見せられないものを見事に踊ってみたかったはずだ。ところが、「牧神の午後への前奏曲」のメロディとニジンスキーと同じような半人半獣で角をつけ、有名なポーズまで東山に取らせるのに、その後はモノローグで、振付けの革命を起こしたのです!と台詞でおしまいなのだ。バカか!東山が踊れないと思っているのだろうか?
 踊れる男をキャスティングし稀代のダンサーの自伝を舞台化するのに、ダンスそのものから避けて、なにが「ダンスアクト ニジンスキー」だ。
 キャスティングした他のメインキャストに配慮するためか、不要で退屈な楽曲もダメ。そんな舞台裏の都合を観客の前にさらさないでもらいたい。安寿ミラと岡幸二郎は19世紀の世紀末から20世紀はじめの空気を見事に演じてみせたが、彼らでさえ、唄い始めると舞台の緊張感は途切れてしまう。あんな退屈な歌を岡幸二郎に唄わせる必要はあるのか?2人とも別に歌がなくても納得するはずだ。プロ中のプロの舞台人である。面白い舞台のためには何でもしてくれるはずなのだ。
 それも、岡の唄う歌のメロディはこれまた、バレエリュスで有名なリムスキーコルサコフの「シェラザード」のメロディをメチャクチャにしたものである。
 正直、ボクの方が圧倒的にいい楽曲をかけるなあと思いつつ聞いた。せっかく岡幸二郎のような素晴らしい俳優をキャスティングするのなら、ニジンスキーへの情だけでなく、彼自身の内面の葛藤を表現した台本でないと話にならない。岡の歌がうまい事は誰もが知ってる。歌は唄わせてもディアギレフのことをキチンと描かない台本を岡は喜んだろうか?
 それから、美しくはあるのだが遠野あすかの下手なこと。先ずは息継ぎ。台詞をしゃべる前にイチイチ、口から音を立てて息を吸うから、イチイチそれがマイクにのって大音響で開場に響く。こんな演技の基本中の基本が…。息継ぎが出来ない人だから、台詞の句読点を変なところでいれてしまう。台詞も調子でいうから伝わらない。岡幸二郎や安寿ミラと同じ舞台に出ているから実力の差が出過ぎてしまう。
 台本は、先述した本質に迫らないだけでなく、モノローグで全てを語ってしまう。芝居で見せない。こうした酷い本である上に、バレエリュスとは「ロシアバレエ」とも言わないし、例えば、あんなにいろんなことをモノローグで全部語って処理するのに、1幕の終わり「春の祭典」の音楽は相当長く時間を取って踊っているのに、ディアギレフが20世紀初頭のパリでその「春の祭典」で起こした文化的、芸術的な大騒動のことは全く語らない。
 バレエリュス、ディアギレフと言えば、パリで幕が降りる前から大騒動になった「春の祭典」事件が代名詞のようなものなのに。ストラヴィンスキーの書いたあの原始的な音楽にバレエの振付けがついて、一部の観客が脚を踏み鳴らして抗議したのだ。ああ、あ〜。
 平山素子の振付自体は、初見ながら相当面白い。だから、今月の新国立劇場の公演が楽しみになった。平山がいいこと、東山がすごいことは分かったけれども芝居としては相当酷いので休憩で失礼しました。
 僕が興行師なら、クラシックバレエの「白鳥の湖」のロットバルトに東山をキャスティングするなあ、と思いつつ帰ったのでありました。東山義久はスゴい。テレビや映画に出ていなくても、こういうスゴい人がいるのだ。
 2012年4月2日@天王洲銀河劇場
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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