佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 演劇 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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作/演出 中村匡克
出演 牧野直英 佐藤もとむ 矢島淳子 藻田留理子 ほか



 とてもこだわった美術、小道具、照明。お金をべらぼうにかけなくてもここまでこだわれる!本も悪くないし、演出も丁寧で。だから、見ていてとても気持ちがよかったし、出演している人が本当に楽しそうに、そして、上手い。小劇場でこういうのに当たると得した感じ。

2008年11月29日
高円寺 明石スタジオ
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鄭義信 作演出
小宮孝泰 出演

 小宮孝泰はつねに最大の熱意でもって人生に取り組んでいる。常に自分を向上させ、いい作品と出会おうとし、お客にそれを伝えようとしている。それが、またひとつ傑作を生んだ。小宮の父が第二次大戦中に今の北朝鮮で朝鮮鉄道に従事していたことをモチーフに生んだ終戦前後の混乱期を綴る作品だ。そこには人間が生きて行こうとする渇望がある。それが生み出すドラマがある。小宮はひとりで何十もの役柄を演じ分ける。90分の間に笑いもスリルも涙も創りだすのだ。
 ほとんどなにもない劇空間にあるのは机と椅子くらい。しかし、それがあっという間に60年前の日本統治下の朝鮮になるのである。これぞ演劇という舞台なのだ。
 残念なのは、前フリの部分が長過ぎて芝居に入るまでちょっともたつくところか。この作品は再演を重ねて行くのだろう。そのうち、いろんなものがそぎ落とされ付け加えられ作品として昇華していくはずだ。

12月6日
下北沢オフオフシアター



 

正岡泰志 作演出出演
小林健一 ほか 出演



ホントに久しぶりの動物電気。5年ぶりくらい。でも前と同じように面白かった。優しかった。お客さんを徹底的に楽しませる。笑わせる、泣かせる、感動させる。演劇に必要なものがいっぱいある。いつもと同じ。本当に頭の下がる劇団だった。観に行って心が洗われた。


2008年11月2日
駅前劇場
作・演出 ケラリーノサンドロヴィッチ
出演  ナイロン100℃ ほか

 杉山薫さんはこの公演のあと直ぐに僕らの稽古に参加して下さるのだ。ケラさんとナイロン100℃の方々とどんな旅をされてから来られるのか。ホントに楽しみだ。



 自叙伝的な作品という前宣伝もあり、出てくる様々な登場人物にケラさんの人物が色濃く投影されて見える。それが作家という非常に孤独な職業ならではの人物追求への徹底さがにじみ出てきているように思えてならない。自分に対しても斜めに、しかし、徹底して深く見つめ絶望とどん底感を味わっているのではないか。それをあっけらかんと書いてみることによってのみ均衡が保たれているようにも思える。
 おならを始めとするくだらないギャグは、深い絶望の縁からは、むしろ面白いよりも哀愁を感じてしまうのではないだろうか?名うての役者さんが深いケラさんへの愛情のもと見事に作り上げた世界であった。ただひとり佐藤江梨子は数日前に台詞を忘れ呆然とする時間を舞台で作ってしまったことは、この6800円という小劇場にしては安くない舞台の観客にするとおいおい!ということであり。もう二度とそんな醜態はできないとの責任感であろう。ひとり役にのめり込むというよりも緊張感漂うもので異質な空気を放っていた。




2008年9月30日
本多劇場


原作 三遊亭円朝
脚本/演出 加納幸和
出演 加納幸和 水下きよし 原川浩明 溝口健二 山下禎啓 桂憲一 八代進一 大井靖彦 各務立基 松原綾央 谷山知宏 丸川敬之 小林大介 美斉津恵友 ほか

 敬愛する花組芝居の作品はどれもが必見だ。それでもこのような古典に臨むときの加納さんの姿勢はまた一段と違う。じっくりと時間をかけてテキストをもう一度読み直すことをする。多くの芝居をみて、いろんな芸術を知っているのに、じゃあ自分はこれとどう対峙しようと向かい合うのだ。
 それに応える役者陣の素晴らしさ。若手勢で5人もピカイチがいるのが花組芝居の恐ろしさ。上手いだけでなく華もあるんよ。


 休憩をいれて2時間40分でどーっと見せてしまおうという企画です。牡丹灯籠の全体像をスピーディな展開で見せてくれるのであります。先ずは普通はありえない企画であること。教育的効果、文化的な意味合いもありますね。加納さんは、名前は知っていてもあんまりしらない作品をきちんと遡上にのせて美しく面白く見せてくれる。昨年の忠臣蔵でも2段目3段目を丁寧に組み込み、何と10段目を組み込んでくれたおかげで全体像がふわーっと見えた。今年も勘三郎さんが仮名手本忠臣蔵の通し狂言をされるのだけれど、10段目だけはやらないんですよね。面白いのになあと思ってしまう。

 今回は花組芝居の役者陣のすごさが前面に出た公演でした。八代進一の女形は美しく、着物も豪華で、お茶目で面白い。匂い立つ良さがある。水下きよしの立ち役は昭和の匂いのする圧倒感。山下禎啓は大きな役ではないのに瞬間で客席を魅了する。それは、北沢洋や高荷邦彦、大井靖彦、原川浩明などもブラボー。美斉津、磯村、堀越はその力量をさらにあげ、小林大介、丸川敬之などはセンターにどうどうと立てる力と華をもつ。そして、桂憲一の見事な役作り。全体のレベルが物凄く高いので、少しでも嫌らしいことをすると目立ってしまう(のだろう)。今回も加納幸和は上手いし魅力的でダントツなのだが、花組芝居役者陣の総合力が物凄く、それはこの劇団の新時代を確実に印象づけるものだった。


 



2008年9月10日
あうるすぽっと


原作 ポール・オースター
構成・台本・演出 白井晃
出演 仲村トオル/田中圭/三上市朗/小宮孝泰 ほか




 すげー面白かった。白井晃さんの作品って今まで何本か見て、全部忘れてーって思うくらいに肌に合わなかったが、これはスゴいぞ。原作もいいのだろうけど、台本と演出がもう秀悦!センスがいいし、スピーディーだし、本質はがつっとつかんでいるし。衣装も美術も照明も存分に金をかけ、その成果を出していた。仲村トオルの素晴らしい演技。田中圭のパッション。三上市朗の見事な渋い演技。小宮さんのコミカルさ。全てが人生の万華鏡を彩るように素晴らしいアンサンブルとなっていた。だからこそ、あの終わり方も納得いくのだ。そう、人生ってそういう感じで幕が降りるのだろうと俺は思ったよ。
 あああああああああああ、面白かった。良かった!!!!!


世田谷パブリックシアター
2008年9月18日
作・演出 西山 聡
出演 服部弘敏 酒巻誉洋 竹岡真悟 カトウシンスケ ほか

 クロム舍の頃の西山作品をふたつくらい見たことがあるが、もう全然ワープ!。きっと4年くらいはこうして自らのフルロングな作品を世に問うことはなかったのだと思うけれど、素晴らしい作品になっていた。ロック!ロックな男臭い空気がぎらぎらとしている。設定はシンプル、話は疾走し、大本に無駄がなく、いい意味での遊び心にあふれている。ロードムービーのような爽快感。ま、そんな病気も、そんな保険もありませんと突っ込みどころはあるが、芝居には関係ない。ロック!ロック!ヘナチョコな酒巻青年が成長して行くのだ。世の中に自分を開いて行くのだ。ギャラリールデコで見た全ての芝居の中で圧倒的な存在となった。服部弘敏という俳優も面白いし、竹中慎吾という俳優も良かった。カトウシンスケも。何かロックでない俳優が混じっていると目立つな。ヤバいよ、あれ。とにかく、西山聡すげー。今年の期待を上回った作品としては、指折りに入る作品となった。
 



2008年9月4日
ギャラリールデコ
作 三島由紀夫
演出 鈴木勝秀
出演 加納幸和 篠井英介 小林高鹿 石井正則 ほか 

 今年度最大の演劇的事件のひとつ。加納さんと篠井さんが共演するのだ。この芝居をみるために今年は篠井さんのお芝居を数年ぶりに見ている。テレビも見ている。もちろん加納さんも!二人がどんな一年を過ごしつつこの戯曲に臨むのか。興味津々である。これを観ずして今年の演劇は語れない!

 あまり火花が散らなかった感じがする。お二人は上手いし魅力的だけれど、三島の書いた物語の方がもっとでかかった感じがする。特に長い台詞になると、この現代女形の二大看板が三島の後ろに二歩も三歩も下がってしまうような気がしたのは何故だろう。面白かったし大満足なんだけど、期待の大きさが無限大にあったからかな?




2008年10月
東京グローブ座
作  三谷幸喜
演出 佐藤B作
出演 あめくみちこ、佐渡稔、小林美江、市川勇、山本ふじこ、角間進、中沢裕子 ほか

 三谷幸喜作品群の中でも屈指の傑作を東京ヴォードヴィルショーのベテランを中心に豪華なゲストを迎えて上演。個人的には久々に拝見する小島慶四郎さん、かわいい中澤裕子さん、おちゃめな山本ふじこさんを舞台で観られることと、ベジャールのバレエで素晴らしい踊りを披露していた小林十市の俳優としての仕事を観るのが楽しみ!



 面白かった。僕はこの作品の原作となっている東京ヴォードヴィルショー本公演「アパッチ砦の攻防」の再演版を紀伊國屋サザンシアターで見ている。それはスゴかった。伊東四朗さんに、松金よねこさんといった名うての客演を呼び、佐藤B作さんを始めとするヴォードヴィル軍団が笑いの超王道のど真ん中を演じきった。
 それだけに実は2006年の公演「戸惑いの日曜日」の新しいキャストが心配で観なかったのだが、朝日新聞で三谷幸喜さんが自賛していたのをみて、大好きな作品であることもあり、今回拝見した。今回は主役であった佐藤B作さんが演出に廻り升毅さんを代役に立てるということで、オリジナルキャストのメイン部分がほぼ入れ替わったことになった。それでも、この作品はびくともしなかった。会場中は笑いに包まれた。ベタな上にベタな作品。誰もがどこかでこういうコメディってあったよなと思えるくらいの王道作品の五つ星作品があた。
 その緻密な作劇と見事な演技に3時間があっという間に過ぎていくのだ。今回も小島慶四郎さんと、小林美江さんが笑いのミサイルを客席に投げ込むのだが、山本ふじこ、市川勇、佐渡稔、市瀬理津子といったヴォードヴィルショーの名優たちの創りだす笑いの土台のスゴいこと。そして、この作品でもあめくみちこさんは美しく面白い、日本のコメディアンヌとしての最高峰としての他に換え難い逸材であることを立証する。例えば、さすがの三谷さんも辻褄が合わなくなったのか、あめくさんが発する「あ、目眩が!」といって倒れるところ。引っ張り方、間合い、声のトーン、倒れ方、倒れたあとの姿形。見事である!!
 ちょっと古いかもしれないが、あめくみちこは、日本のゴールデンホーン、メグライアンのような存在だと思うのだ。
 また、中澤裕子の可愛さ、小林十市の品のよさなども特筆すべき作品に仕上がっている。西郷輝彦、石野真子もステージを重ねているだけにぶれの少ない演技で。どうも今日、小島さんが間違った台詞を笑いとして取り込む余裕もあったようだ。観客の誰もが8500円を払ってみて良かったと思っているそんな作品になかなか出会うことはできないはずと僕は思うのだ。
 ビリーワイルダーが見たら、喜ぶだろうなと思う、そんなお芝居。家族揃って、友達、恋人と、誰とみても、ひとりでみても楽しい傑作です。こういう作品を初めに観ると演劇が好きになるものなのです。




 2008年9月1日
 サンシャイン劇場
作 イヨネスコ
演出・美術 佐藤信
出演 柄本明 佐藤オリエ 高田聖子 ほか




 鴎座もいいのですが、佐藤信さんにきちんとした予算を渡せばここまでの作品を作り上げてくれるということをきっと証明してくれるのではないかと思います。イヨネスコは言葉だけで、いままで対峙したことのない作家です。それを佐藤信さんという知性だけに頼らない感性の持ち主を通してみる。壊すことを厭わない。巨匠になることを拒み続ける巨匠によって作られる楽しみがここにはあります。
 難しそうだと怖がらずにぜひご覧あれ!こういう壁の高いものこそ超一流のスタッフキャストで観なければ乗り越えることはできません。ちょうど、シュトックハウゼンの音楽の最高のインタープリターがマウリッィオポリーニであるように。

2008年9月
あうるすぽっと

 最終日に見た。やっぱり見ておかなくちゃと思ってみた。スゴかった。こんなに面白い作品だと思わなかった。ある国王の臨終までの葛藤を描いた作品で、生にしがみついていた国王が次第に死を受け入れて死んで行くまでの話なのだ。それが、柄本明という肉体と精神を通して本当に面白く本質的で現代的な作品になっていた。佐藤オリエ、高田聖子さんという二人の女優さんも素晴らしく、今年屈指の傑作。
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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