佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 演劇 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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作演出 ノゾエ征爾
出演  伊藤ヨタロウ 加藤直美 カオティックコスモス 町田水城 鈴真紀史 滝寛式 井内ミワク 竹口龍茶 ほか



 10周年ということ。周年とか言いながら、たいていの劇団はなにもしない。それが、例えば、はえぎわであれば おなじみの屋台崩しでボリュームアップみたいなとこでスペシャル感を出して逃げるようなことをしてしまう。はえぎわは違った。そこいら辺の今までやってきたことは、敢えて捨てる方向に傾き、10年先とまでは言わないが、次のはえぎわを見据えた作品を持って来た。そこが、違う。大したものだ。
 そして、それが面白かった。作劇としては、ストーリーはあるのだが、いつも以上に、解体され、無意味化した、いつも以上にフェリーニのようなめくるめく世界で、上手く行かないとぐちゃぐちゃになってしまう芝居なのに、展開も早く見事でとても面白かった。
 フェリーニ的なと書いたけれど、視覚的よりも、空気とか登場人物の内面とかでめくるめくにしていたのが、これも今までのはえぎわの殻を突き破っている。
 つまり、いままでのはえぎわは、視覚的な面白さも最大限取り込むことをしてきたのだ。かぶりもの、屋台崩し、そういう諸々のこと。でも今回はそれは必要最小限にしてしまった。
 これは、ノゾエ征爾さんのイメージが明確で、役者がスゴく上手いから成立するんでしょう。ノゾエ君の感性には何か貴族的な、ドイツオーストリア系の薫りがするのだが、今回はそれを隠さずに曝けだして挑んだ。世界のエグイ話をこれでもかとやるところなんか分かりやすい例。次に書く机に座る4人の女性とそこに割り込むひとりの男優のコントラストも分かりやすい例。

 はえぎわは、役者がスゴい。鈴さんや加藤直美さんらが4人で机に並んで会議するとこがあるんですが、もうアドリブにしか聞こえない腕前です。そして、今回のカオティックコスモスさん、最高ですね。パッキャラマドのネタバラしに行くところなんか、もう見事なシフトチェンジ。砂に埋まるところの声!音量!幾つかの役をやるのですが、同じ俳優と思えないほど化ける。中身的に。すごいな。
 滝さんも今までで一番といっていいほど、乗りまくって演技していた。格闘シーンなんかも顔色ひとつ変えずに。スゴいです。
 そして、ゲストの伊藤ヨタロウさん、存在感だけでなく芝居がいいんです。ヨタロウさんの楽曲も泣かせる曲で、ライブも聞かせてもらってオトク感もありありの、とても贅沢な芝居だった。
 さらに美術、照明も非常に良かった。照明は、狙いが明確。ドライでシャープな光だと思った。スゴく攻撃的、挑戦する照明だった。この芝居は気持ちに余裕があり、感性がぴんぴんしているときに見ないとダメです。疲れた身体はホントにダメ。はえぎわ。次も見ようっと。

 下北沢ザスズナリ
 2009年2月26日
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作演出 横内謙介
出演 中原三千代 杉山良一 藤本貴行 鈴木利典 川西佑佳 高木トモユキ 累央 犬飼淳治 伊阪達也



 紀伊國屋ホールでの初演の時はイマイチ乗れなかったのだが、今回、いろんなものを削ぎ落としたのか、展開が非常に早く、見ていて引き込まれる。非常にエンタティメント性が高いものをきちんと残しているが、横内謙介の劇作家としての核となるものはズドーンと前に出てくる。ダンスは格段に上手くなっているし、歌も良くなった。小劇場と言われる劇団がここまでの作品を作り上げたことに驚きを禁じ得ない。また、客演陣も魅力的でその生かし方も素晴らしい。東京で公演していたらもう一度見たいのになあ。これが3000円というのはとにかく破格。神奈川県、本当にありがとう!!!!

 累央、とても苦手な役者だったのだが、全身全霊をかけて役を演じていた。きっと本来はクールに行きたいと思っているのだろうが、山田役の伊阪さんという被るキャラの青年が入ったことで火がついたのか。二人でものすごいオーラ出しまくり合戦を繰り広げる。女の子にはたまらないだろう。
 中原三千代が、人生のクライマックスに続いて素晴らしい。ブロードウェイのミュージカルを見ていても作品を深め盛り上げるのは、デブだったり、おばさんだったり、おじいちゃんだったり、まあ作品のど真ん中にいない人で、その人がどれだけ魅力的かによって作品の面白さが相当異なる。この作品で中原三千代が若いキャストに混じって負けまいと踊っている姿は本当に素晴らしく、そして、作品に深みが出た。ブロードウェイなら、きっとソロダンスのシーンや歌のシーンがある役柄だ。素晴らしい。三千代さんブラボー!。そして、杉山良一さんが最後の決めゼリフを言うのもやはりいい。その場でひとつひとつ沸き起こってくるようなあのような台詞まわしじゃないと、青年の気持ちに火をつけたことにならない。ザ説得力の存在感だ。
 鈴木利典は相変わらず作品をまとめることに徹していて、日本のお父さんになってきた。的確、外さない。早く老けないかなあと思う。父娘の物語なんかをみたい。扉座の貴重な存在だなあ。3役やるのだが、全部面白い。
 鈴木理沙と上原健太がどっしりとしてきた。多くの商業演劇の経験が生きているのだと思う。堂々とした風格を持つようになった。藤本貴行はまだ新人であるが、とにかくいい。この作品に必要な出演者が肉体を酷使することを何の手も抜かずやっている。それは、舞台の端でホントに見えないところで唄ったりリアクションをしているときもそう。それは、川西佑佳にも言える。とても一生懸命踊り唄っていた。ひとりで放つ台詞はほんのひとつか二つなのだが、皆の中で演じている時にも懸命に役をやり続ける姿はみていて清々しかった。
 安達雄二が面白い。ひとつひとつの動きにセンスがある。音楽がある。串間保彦がいい。この人は舞台に誠実に立っていることを感じさせる。反面、期待の二人。江原由夏と高木トモユキにはとても期待しているのだが、何かなあ。何か足りないんだよなあと思ってしまうのだ。なぜだろう?分からない。期待し過ぎなのかなあ。

 伊阪逹也さんという俳優は初見だが、なるほど人気があるのが分かる。二枚目をやることの覚悟ができている。劇団公演に乗り込むのは、ホームでやるのと違うものがあるはずで、数々の劇団公演で悲惨な結果を見て来た。しかし、この青年はカンパニーに溶け込んだとともに、背負わされた責任を果たしていた。スゴい。

 AKBの4人はもう手放しで素晴らしい。事務所がいいんだろうなと思う。とにかく拍手。

 そして、エアリアルをされる桧山宏子さんは、芝居がとにかく素晴らしい。美形な上に、身体の動きのひとつひとつがキレイなのでもっと見たいと思わせてくれるのだ。小牧さんも同様に素晴らしいのだ。

 これだけ素晴らしいので、何てことのないシーンで集中力を欠かしちゃうと全部丸見え。恐ろしいなあ。例えば、蛇腹の開け閉めをやってる研究生。ただ開け閉めする黒子なのか、演技するのか、場面によって違うのでアレレと思ってしまうのだ。唄ったりしているときは悪くないのに勿体ないです。さすが劇団員はそういうおそろしさを知っているのでしょう。隙を見せません。

 
 





2009年2月27日
神奈川県立青少年センターホール
出演 佐藤B作 山口良一 中島淳彦 ほか
作・演出 中島淳彦




 会場には舞台の進行に併せて、あ、それをしたら危ない!みたいな声をかえるおばさんもいて、まるで商業演劇ののりの空気。東京ヴォードヴィルショー25人のキャストに加えてゲストが4人。総勢29人の御芝居、たくさんの楽曲をいれて2時間と少しの作品に仕上げるのは本当に難しいはずだ。登場人物にスポットを当てたとしても、その人の内面まで深く掘り下げていくというのは時間的にも難しい。何しろ、各登場人物が出る度に、職業がどうだとか、経済や男女関係のことなど、ある程度説明していかなくてはならない。
 東京ヴォードヴィルショーの役者さんたちはやはりスゴい!今回は、山口良一さん、まいど豊さん、たかはし等さんがずるいほどおいしい役回りだった。主に笑い担当みたいな。石井さんは、蜷川さんのお芝居よりもさらに濃く、佐渡さんは、ちょっと抜けている上手く立ち回ろうとする人間を見事に演じていた。佐藤B作さんを病気のあとでは初めて見るのだが、正直若返っていた。ものすごく節制されているのだと思う。そして、見事に舞台を仕切り、見事にお客さんを喜ばせていた。ギターも歌もうまいんだと。往年の欽ちゃんバンドのときは何を担当していたっけと。大森ヒロシさんは、自分の役回りと守備範囲をすごく正確に把握していてプロの演技だなあと思った。市瀬さんが素敵で、山本ふじこさんはやはり可愛い。若手は見せ場が少なくちょっと可哀想だなあと。
 見ていてこれだけ楽しめるのは、何よりも東京ヴォードヴィルショーの役者さん自身が芝居が好きでこの舞台を楽しんでいるからだと思う。
 開場後、すぐに海援隊の千葉さんが30分に渡ってライブトークをする。正直いって、もっと早く行っとけば良かったと後悔。


2009年2月25日
下北沢本多劇場


チョンミュンフン指揮
東京フィルハーモニー管弦楽団
ヴェルディ作曲/レクイエム

カルメラレミージョ/藤本実穂子/キムウキョン/ロベルトスカンディウッティ 
東京オペラシンガース 

2月の定期のチケットは親族に渡したのだが、縁があって東京フィルから招待して頂いた。そして、私はヴェルディのレクイエムの素晴らしさを堪能したのだった。私は似非クリスチャンであるが、この楽曲は純粋に声楽曲として聞きたいと常々思っている。ヴェルディが死というものに真正面に向かい、人間の業の哀しみを歌い上げた傑作である。
 NHK交響楽団、メトロポリタンオペラハウス管弦楽団などで聞いているのだが、今日の演奏はきっと私の心にいつまでも鳴り響く演奏会となるだろう。
 まず特筆すべきなのが声楽陣だ。今日のそれは世界の最高水準である。ソリストはもちろん、合唱のハーモニーと深みは筆舌にしがたいものがあった。そして、東京フィルは本当に死にものぐるいで演奏する。弦楽器のピッチはそろい、ブラスセクションは咆哮し、一丸となって神に対峙するのだ。
 なんと!なんと!
これが定期演奏会できけちゃうのだ。東フィル、あんたはスゴい!シカゴ交響楽団はもちろん素晴らしかったが、この予想を遥かに上回る東京フィルの演奏会は、今月の最高のヒットである。




2009年2月22日
オーチャードホール
作演出/工藤千夏
出演/水下きよし ほか



 女性ならではの芝居というのはこういうのを言うんだろうなあ。限られた予算の中でもいろんなことができることを示した佳作。別に人間に肉迫するわけでもなく、もちろん社会派でもなく、淡々と描ききるのが女性らしい感じがするのだ。女性はすべてを受け入れることができるのか…?



2009年4月
アトリエ春風舍

作 アラン・エイクボーン
翻訳・演出 G2
上演台本 桝野幸宏
出演 松尾貴史  大和田美帆  市川しんぺー 島田歌穂  ほか



 とっても微妙な感想をもつ芝居。面白かった。松尾さんが面白かった。エイクボーンとかそういうことじゃなくて、松尾さんが面白かった。そういう感想を持ちました。

 アガペストアは青山円形劇場で1998年に上演された超老伝から、大好きなもので、今回も期待が高まる中でかけたのであります。アガペストアの魅力はメインの松尾さんと対抗することのできる最強の役者陣が常に舞台上にいたことでありました。例えば、八十田さん、坂田さん、粟根さん、山西さん、後藤さん、そして、松永玲子。そういった信頼できる人たちを一切排して、今回は新しい人たちとの作品作り。それも、エイクボーン。果たして?
 アガペストアの最高傑作は誰がなんといおうと、BIZシリーズです。設定も話のスケール感もなにもかも好きなのであります。ハリウッドで映画化されてもいいのになと思ってます。ジョージクルニーがこの台本を知れば、きっと買って作ってしまうと思うのです。それほど面白い。シチュエーションコメディとしても最高の作品です。それも誰の真似でもない。 
 そして、作り上げた作品に、松尾さんは時事ネタや物真似を存分に、観客からするとアドリブのように入れて行く。それこそが、待ってました!のシーンとなる。BIZシリーズでは、観ようによっては暴走気味な松尾さんのハイテンションさは作品にアクセルを踏ませることはあっても、脇道にそれることはなかったのであります。
 先ずは今回のエイクボーンの作品なのですが、最初は大和田さん(何て美しくなったのだ!)が、次に佐藤真弓さんが、冒頭に延々と長台詞を言いまくる。そこで客席はどんより感が漂い始めてしまうのです。エイクボーンの台本か、日本版台本のせいなのかは分かりません。しかし、観客にとってみると、まだ見たことのないいろんな人たちの名前を羅列されて、その人のエピソードを延々と聞かされてもなにも感情移入できないのではないでしょうか?エイクボーンの作品の初演は、イギリスの地方で、それこそ、観客とのある程度のお約束のもとに書かれている部分もあるときいています。そうなると、これは日本版では相当考えなくちゃいけない部分だったのではないでしょうか?
 佐藤真弓さんも大和田さんも、この台本に果敢に戦いを挑んでいました。こんなに頑張る佐藤真弓は初めてみた!ってくらい頑張るのです。それも、次に出てくる松尾さんのことも考え、負けまいとものすごくリスクをとって最初からハイテンションで飛ばす。時にはそれが観客の拒絶反応を引き起こし、時には受け入れられ、本当に大変だなあと思うのです。これは佐藤真弓さんの演技のスタイルではないのでは?と思うのです。やはり、松永玲子さん向きのシーンだよなあと思ってしまうのです。藤山直美さんでもいいです。何て言うか、佐藤真弓さんは、元々、波のない湖のような、白いキャンバスのように舞台に出てくるのですが、作品の中の毒や狂気の中で、いろんな色がついていく、あげくの果てには、エイリアンがお腹の中から出てくるみたいな演技をされる。それが面白いんだと思うのです。普通の人の狂気というか。なんていうか。どんな役柄にも化けることのできるいい女優さんです。それに反して、藤山直美さんは何をなさっても基本的に直美さん、松永玲子さんも、そういうタイプの女優さん。松永さんは守備範囲は広いけれども…ね。冒頭のシーンは佐藤さん向きだと思えないのです。
 別にミスキャストではないけれど。ちょっと違うなあと思ったのはそういうことなんだと思うのです。佐藤さんのそういった面白さが観客に理解されたのは後半であり、観客がやっと笑いになじんだです。ここまで佐藤真弓が全身全霊頑張って、やっとこさって感じでした。

 冒頭からそんな感じで本当に大変でした。30分近くに感じた時間が過ぎて、やっとこさ、松尾さんが登場!
 しかし、その直前に松尾さんは上手奥で唄い始めるのですが、客席がやっとここで爆笑となるのです。やっとアガペストアだあ!って感じでしょうか。松尾さんは出てくると、ギアを入れまくり、どかーんと頑張るのですが、期待の市川しんぺーさんでさえ、松尾さんとがぶりとやってくれない。若い柳さんや、大和田さんには期待できない役割で、しんぺーさんしかいないのに!!!
 こうして松尾さん以外のキャストは松尾さん面白いなあって見てるだけ感が強くて、かぶせていくリスクをとってくれない。松永さんや山西さんや八十田さんと違うところです。松尾さんは面白いでしょうが、あんなに舞台で出演者が素で笑っているように見えるとしらけてしまうのではないでしょうか。
 アガペストアは、松尾さん以外の最強キャストがしっかりとストーリーと笑いの外枠を固め、そこを松尾さんが縦横無尽にいじる。それに負けじと戦うキャストの演劇一騎討ちが面白いのですが、それがね。今回はほとんどなかった。
 それから、アランエイクボーンの作品の面白さは…あまりね。伝わらなかったです。

 だから、感想は松尾さんがとにかく面白かった。麻生首相の物真似も、中川大臣へのちょいとした嫌みも全部面白かった。やっぱり松尾さん、面白かった。これが、僕の感想です。

  

2009年2月16日
紀伊國屋サザンシアター
作演出/鄭義信
出演 オペラシアターこんにゃく座
 


好きか嫌いかと問われれば、苦手な作品だ。芝居が始まって、この芝居で伝えたいメッセージは手に取るように分かってしまった。分かりやすい左翼系の芝居なのだ。来ている観客も、その多くが左翼的な芝居を見に来ているお客さん。別に、パフォーミングアーツにおいては、左翼的なものも、保守的なものもどちらもあっていい。「同期の桜」も、「民藝」もOKだ。
 しかし、苦手である。何しろ、お客の大多数が、もとよりその考え方に共鳴している人ばかり。客席に入ると、共鳴の空気がぷんぷんしている。今宵なら左翼的な時間を一緒に共有したい祝祭的な空気。同じ考えをもった人向けには素晴らしい作品だったろう。しかし、どうだろう。作品のもってるパワーなどで、人の考えを変えるところまで完成された作品だったのか?

 萩京子さんの音楽は、レシタチーボとアリアと古典的な分け方をさせてもらうと、アリアでは、ワイルのような風合いを出すこともあって引き込まれるが、レシタチーボの部分ではどんよりしてしまうことが多かったというのが僕の感想。オペラと銘打っておられるけれど、どちらかというと、ワイルやブレヒトの作った音楽作品に近いものだし。
 エンタティメント性はどうだろう。作品に出てくる登場人物が生き生きして面白いのか?と問われると、これに関しても、祝祭に参加する人でないと辛いのではないか?僕の隣の観客は異様なほど、いちいち笑い反応していた。何でこんなのが面白いのか?と思えるくらいだ。
 1幕は、正直少し寝た。何しろ、くどい。客いじりも台詞もくりかえされる。音楽もいまいち盛り上がらない。

 諦めかけたのに、2幕は盛り返した。「ライライライ」など、ショーとしての面白さも加味されたし、この作品の本質的なメッセージである民衆の生きる力を賛美する、肯定するという部分での力強さも感じられた。1幕はメッセージは冒頭で分かったけれど、それを裏打ちする力強い音楽と展開が弱かったような気がしてならない。楽しく面白い舞台こそ僕は多くの中立的な人に影響を与え力強いはずだと。祝祭的な空気のする芝居はちょっと苦手なのだ。ちょっとに変化したか。


2009年2月12日
世田谷パブリックシアター

ピーターシェーファー作
ジョンネピアー 演出
リチャードグリフィス ダニエルラドクリフ出演

作品はピーターシェーファーの傑作で面白いのは当たり前。美術も非常にソリッドで良くできていた。しかし、ダニエルラドクリフの話口調はやはりハリーポッターで子供っぽい。そこを打破したかったんだろう。それに最後のカップル二人のあんなに長い、あんなに直接的な、あんなに丸見えのSEXシーンはなくても良かったのではないか。とくに、この作品においてはラドクリフが全裸になってセックスをするシーンばかりが話題になっていて、それによってハリーポッターの公開が遅れたりもしている。観客の興味がそこに集中すると作品全体の価値を下げないか?
リチャードグリフィスの巨体はそれだけで見ていて面白い。そして、繊細で神経質な分析医を見事に演じていた。彼のファルスタッフをみたいと思った。





ブロードハート劇場 ブロードウェイ
2009年1月16日
アントンチェホフ作
トムストッパード翻案
サムメンデス演出

ラネーフスカヤ サイネードキューザック
ワーニャ  レベッカホール
ロパーピン サイモンラッセルビール
トロフィーモフ イーサンホーク
フィールス リチャードイートン
ヤーシャ ジョシュハミルトン ほか

 ロンドンのオールドビックとニューヨークのブルックリンにあるBAMブルックリンアカデミーオブミュージックの共同制作によるブリッジプロジェクトの今回は、櫻の園と冬物語である。目を見張るようなスターたちが、絨毯を敷き詰めただけの空間に家具などの最低限のシンプルなセットの中で見事な演技を繰り広げる。サムストッパードによって翻案されているというが、きちんとテキストを呼んで来なかったからどこがどう変更されたか分からないが、筋はほぼそのままである。よくあるような時代や場所の読み替えも行わずストレートにこのチェホフの喜劇を上演してみせた。それなのに、現代的であり本質的なのである。ロパーピンやフィールスの面白さといったら何だ!
 まるでサムメンデス監督の「アメリカンビューティー」と同じように家族もコミュニティも壊れかかっており、表層と内面のずれがどんどん表面化していくからだ。こういう作品を見るために外国にまでやってくるのだ。本当に面白かった。



2009年1月28日
BAM ブルックリン
 
茅野イサム演出

 まるっきりウエストサイド物語であり、歌あり踊りありのミュージカル仕立てだった。先ずはそれを見ように酔っては素舞台に近い美術で、舞台を上下させる方法であの巨大な空間を縦横無尽につかったアイデアを買いたい。歌唱や踊りもブロードウェイの直後だけにアレレなのだが、そこに若い役者が込めようとしている気持ちや、ステージ上で役者通しが非常に信頼しあって演技しているのも伝わってきた。
 脚本にはもう少し工夫も必要だし、音楽もいまひとつと思ったし、あれだけやるのならオープニングはもっと上手く見せられたのではないかとも思うのだが。若い観客にこの作品はたまらない魅力を持っていることも良く分かるのだ。




青山劇場
2009年1月25日
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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