佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 演劇 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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モラル・作/演出
鈴木アメリ、堀雄貴、萩原達郎 ほか /出演



「若いからこそできるこの豪華なバカバカしさ」
 王子小劇場で公演した前回の全裸になる作品も好きだったが、センスのある格子縞のパンツに身を包んで演じられる今回の性をまつわる少女の冒険物語=思春期のラブストーリーも好きだなあ。恋愛にある理不尽さもきちんと残っていたり、少女が思う自分勝手な妄想もきちんとあるが、全部乾いた視線で距離感をもってモラルの視点で構成されている。言葉一つ一つにイチイチ小道具が出て来たり、衣装が変わったり、無駄で疲れる大技の演技を見せたり。若いからこそできるハイテンション、バカバカしさがここにはある。観ているだけで元気になれる。心が充足されていく、そんな芝居がここにはある。異様にキレのある俳優たちは誰もが魅力的だし、秋山光洋の舞台美術はセンスがいいし、伊藤孝を照明に迎えるなど、いやホントにスゴい体制で上演しているんだなあ。裏は小道具や衣装で溢れているんだろうなあとも思う。ホントに観るものを幸せにさせてくれる芝居だ。
早稲田大学劇研アトリエ 2011年12月12日(通し稽古で拝見)
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原作:樋口一葉、脚色:久保田万太郎、
現代語訳:島田雅彦、補綴・演出:成瀬芳一、
言葉監修:渡邉治美

出演:水谷八重子、青柳喜伊子、勝見史郎、
矢野淳子、川崎さおり、井上恭太、松村沙瑛子、
木内宣輝、田居美由姫、田居大宗

この公演は水谷八重子の自主公演で、水谷八重子が樋口一葉として舞台で朗読をし、新派俳優がそれぞれの役で演じるという新しい形の朗読劇です。

「豊かに広がった劇空間
/多くの人に見てもらいたい新派入門に最適の作品」
 明治の金持ちとそこに奉公する貧乏人の、大晦日の悲喜こもごもを綴った作品。名も無く貧しく美しくとせず、善人に宿る罪の火種などもきちんと描いた樋口一葉の現代にも通じる物語を70分でこれだけ堪能させてくれる舞台がどこにあるだろうか?きっとこの作品を見ると、人に寛容になれるし、もっと多くの人を愛する事ができるようになるだろう。年の瀬に一年の生の感謝を思いながら見るのに相応しい作品だ。12月は忙しいから上演時間70分というのも嬉しいのでは?
 新派の伝統を次代に受け継ぎ、ベテランにも普段はあまりやらないような配役をあてがい、劇団新派自体の筋力アップにもつながっている。シンプルな美術であるが必要なものはきちんとあり、衣装や床山まできちんと行い。文語調の文章の難解な部分は現代語役もつけての見事な構成も素晴らしい。麻布区民センターで9年めとのことだが、来年以降も続ける価値のある作品だし、たった4000円で見せてくれるので、新派を観た事の無い人には、時間もお財布もちょうど入門向きにも最適ではないか?また小劇場の俳優さんなんかにも是非みてもらいたい。
 役者は、水谷八重子がカーテンコールで新派のホープと語った井上恭太から語りたい。現代的なのに古風な部分も十分有る理想的な二枚目だし、芝居も伝統だけでなく現代の口語芝居なども含めいまの流行も意識していてうまい。唯一の欠点は声が抜けていかない事か。これからますます大役も多くなるだろうから必須の課題だと思う。
 みねを演じた松村沙瑛子は、入門から間もないというが、この役にぴったりの風貌で時にぎこちないところもあったけれど、それも含めて初々しく良かった。しんを演じた矢野淳子やあやを演じた青柳喜伊子などはベテランの余裕も感じられて芝居を支えていた。
 水谷さんは例によってガラガラの声なんだけれど、可愛くて。狂言廻りにはぴったりだった。もう少し台本から目を離してくれるともっと嬉しいな。だって眼力のある人だから。
 来年もきっと上演があるだろうから、ぜひ行かれる事をお薦めする。
2011年12月9日@麻布区民センター
文学座アトリエでのテネシーウィリアムズ1幕もの4作品の上演。

作 テネシーウィリアムズ
演出 靍田俊哉
「財産没収」
「バーサよりよろしく」
「ロンググッドバイ」
「話してくれ、雨のように…」
出演 藤堂陽子 松岡依都美 佐川和正 亀田佳明 細貝光司 ほか


「文学座+T.ウィリアムズ…ああ、あまりにも高いハードル」
 文学座がテネシーウィリアムズを上演するということは見る側には大きな期待をさせ大変高いハードルとなる。何しろあの杉村春子が代表作のひとつに磨き上げた「欲望という名の電車」。杉村春子が亡くなって相当経つまで大女優は誰も手をつけなかったほどに仕上がっていたのだ。テネシーウィリアムズは文学座のお家芸といいたいくらい。
 今回の作品は短編4本をオムニバスのようにつなげた。「ロンググッドバイ」以外は名前も知らない作品だったが、テネシーウィリアムズの匂いプンプンの作品群であった。
 演出の靍田俊哉氏は1961年生まれだから、そうした杉村春子の名演なども舞台で十分という程、観ているはずである。ますます期待が高まる。しかし、僕のハードルがあまりにも高かったからか、細かいところがいちいち気になり、高い期待通りとまではいかない上演だった。
 1作目の「財産没収」には、ミニブランチのような女が出てくる。狂乱してしまうところまでは行っているのだが、そこに踏みとどまれない人間の業のようなものは出ていない。自らの世界にとどまって、相手役の男と絡まず一人で世界を作り上げている。出てくる地名など固有名詞の発するイメージもつかんでいないような気がした。大変重要な役柄だけに残念だ。相手役の亀田佳明は文学座の若手のトップランナーのひとりだ。役になりきり化ける事のできる俳優だ。しかし、相手役がああいう演技で来られちゃ、どうしようもない。何となく焦点のぼやけた芝居になってしまった。旨いんだけどね。深みというところまではいかない。
 2作目「話してくれ、雨のように…」の細貝光司はきちんと役柄をとらえ見事に演じていた。ベットに横たわる姿や立ち姿も美しく華も匂いもある役者だ。しかし、声が良すぎた。長台詞のところなど、台詞に寄りかかり、肉体と声のバランスがやや崩れ声が前面に出て来た印象。残念だ。松岡は前々から旨い。太地喜和子の持っていた女の可愛さを持つ女優になるかもしれない期待の☆だ。あまり濃厚に演じるよりもフラットなところに座標軸を取った。お見事。
 3作目の「バーサよりよろしく」は小野洋子の代役でベテランの玉井碧が藤堂陽子の相手役を演じたのだが、藤堂が入念に作り上げた底辺を生きる女を見事に演じていたのに対し、肉体で演じるところと長い台詞を語るところが旨くつながっていない様な気がした。素晴らしい台詞が出てくると、このようなベテランでも手こずるのかなあと。ここでも、ちょこっと出てくる松岡の立ち姿なんか非常に印象的。
 最後の「ロンググッドバイ」はニューヨークが舞台なのかな。面白い。亀田が1作目と違い演技の立ち位置もしっかりしていて、あまり開けっぴろげな演技をしない若いのに重厚な佐川と見事な掛け合いが出来上がっていて楽しめた。
 引越屋さんもいいアンサンブルを演じてた。 
 僕だけが不満なのかとも思ったが、午後のマチネだったこともあるからか、僕の廻りでは多くの人が舟をこいでいた。それもあっという間に。何艘もこぎ始めて驚いた。
2011年12月7日@文学座アトリエ
千葉雅子/脚本 G2/演出
出演 松尾貴史 柳家花緑 坂東巳之助 松永玲子 植本潤 ほか
 


「圧倒的名人芸の披露」
シンプルでモダンで変幻自在な美術のセンスの良さ。衣装の面白さ。空間を一瞬にして江戸時代が今の時代に続いていたらという空気に変えてしまう役者陣の力量。それは脱線シーンでも遺憾なく発揮される。花緑さんはもっとお芝居やって欲しいなあ。落語より好きだな。松尾貴史さんは無理せず芸をふわっと披露。これでもか!のビッグビジネスシリーズが懐かしいけど。50才を越えてますますスゴい。ちょっと無理して観に行ってよかった。

2011年11月20日マチネ@世田谷パブリックシアター
作演出 ケラリーノサンドロヴィッチ
出演 みのすけ 温水洋一 三宅弘城 ほか


「ふわっと思い出した初演のこと」
 2時間45分の長尺ものなのに、俳優さんたちは一瞬の隙もなく見事に演じきる。再演もので出演者もほとんど同じということで10年前はどんなだったんだろう。比較してみたくなった作品。ケラさんが純文学ロシアものとかに行く前の作品でありんす。10年前にきいたメインタイトルの主題歌や劇中歌「泳げたいやき君」とか音楽でふわっと思い出すのが不思議。音楽の力ってスゴいな。
2011年11月13日 本多劇場
泉鏡花 作
白井晃 演出
出演 篠井英介 奥村佳恵 平岡祐太 坂本健児 小林勝也 田根楽子 江波杏子 ほか 


 モダンな感覚で見事につくりあげた美しい日本美に溢れる名舞台

 美しい、ひたすら美しい。そして豪華でモダンな見事な舞台だ。
 篠井英介はダイレクトメールの挨拶文の中で富姫を演じるのはこれが最後になるだろうと書いていた。この泉鏡花の作品でも幽玄な世界を中心に取り入れた作品で不思議な作品だ。新国立劇場中劇場の奥行きと舞台機構を徹底的に使った見事な美術である。それもモダンなのに日本的な美しさに溢れていて、僕は何か日本の歴史の中に、日本のさまざまな工業プロダクツの美がその歴史の中にあることをすごく実感した。衣装も美しく、近代日本洋画家の美感が出ていた感じがした。音楽は録音か?生演奏がいいなあ。
 篠井英介は例によって見事。玉三郎のそれとは違うのだが、自らの富姫を堂々とプレゼンテーションする。江波杏子はすすき役である。この幽玄の世界を取り仕切る役柄に彼女はベストキャストだろう。田根楽子、小林勝也の存在感と演技力もこの世界を高めていく。驚いたのは坂本健児の朱の盤坊で迫力もあり、見事な身のこなしで、LIONキング坂本の能や狂言も見てみたいと思ったくらいだ。アンサンブルも見事でつまり細かいところまで行き届いた見事な舞台なのだ。殺陣も決まるしなあ。
 で、最も驚いたのは平岡裕太が良かったこと。ジュノンスーパーボーイだから姿はいいのは当たり前だが、この泉鏡花の台詞を見事にものにしていた。すげえなあ。

 日本の舞台芸術の水準を底上げする美しい見事な舞台だ。こういう舞台こそ、新国立劇場で税金を使ってやるべき作品で、納税者としても納得のいく見事な作品だった。 

2011年11月9日 新国立劇場中劇場
作/岸田國士 演出/西川信廣
『明日は天気』大原康裕 浅野雅博 藤側宏大 片渕 忍 ほか
『驟雨』本山可久子 石井麗子 名越志保 若松泰弘
『秘密の代償』菅生隆之 斉藤祐一 塩田朋子 渋谷はるか



「秘密の代償」に客席は多いに湧いた!
 休憩を入れて2時間半。金はかけているがシンプルなスタイリッシュな美術であるが、そこには日本の和を感じさせるもの。奥にはクリムトの接吻をモチーフにした絵画の断片も。残念ながら会場からいびきが聞こえた。ひとつではない。幾つも。文学座にしては散漫な感じがしたのも事実。そして、舞台がシンプルだけでなく空間を役者が作らなくてはならない。着物はきちんと着ているように見えるが、例えば、歩き方ひとつでその人物にならなくてはならないし、今回の芝居はすべてに階級がある人間関係(主人と手伝い、泊まり客と仲居といったように)であるので、そこに何らかの空気がなくてはならない。もちろん、それを意識して壊してしまうというのもあるのだけれど、何人かの出演者にそういう意識の低さを感じさせた人もいた。
 小津映画などを見てしまっているのでそういうところをスゴく感じた。
作品としては休憩後の「秘密の代償」に客席が沸いた。みんなエロとか嫉妬とかが好きなんだなと思った。「フィガロの結婚」のような話で面白い。菅生さんは重厚なのにユーモラスな年配の男を見事に演じ、塩田さんは美しい所作を持ちながら、それを上手く壊したり、笑いにつなげたりとお見事。若い渋谷も見事。斉藤は芝居は上手いのだが、若く見えないのが残念。イメージでは幾つの設定なんだろう。20才くらいじゃないのか?

2011年11月7日 紀伊国屋サザンシアター
野良猫連盟 第2回公演 雨と血、そしてささやかな祈り
作・演出 小金井篤  
出演  嚴樫佑介 内田斉一郎 小金井篤 宍戸裕美 渋谷恭子 月野原りん 奈良京蔵 矢田部美良

「小金井篤は、きちんとした手腕の持ち主である。」
 燐光群に長く在籍した小金井らしいしっとりとした作品だった。限られた手札の中で作品としてきちんと作り上げる手腕は高くしていいのではないかと思う。戸惑いが残っていたのか、もっとさらっと終わった方が効果的だったのではと思うところもあったけれども。嚴樫佑介は燐光群時代の演技には見せなかったところも披露し面白かった。

2011年10月28日 SPACE雑遊
バナナ学園純情乙女組


 「公的資金に頼らないでやるのなら僕はいいと思う。」
約50分の間、約50人の男女が踊り続けるという作品。客は全員がカッパを着る。それは、大量の水が客席にばらまかれる。物も飛んでくるからだ。嫌だったのは男子が口ぶ含んだ水を大量に何回も客席に向かって、その飛沫を掛けること。通路側に座った自分を恨んだ。阿鼻叫喚の世界とはこのことか。前に一度、招待で見せてもらったことがあり、今回はお金を払ってみてこの劇団についての自分の思いを決めたいし、僕の芝居に出てくれた女優や、出てくれる男優が出ていたから、でかけた。平日マチネで時間もあっていた。
 芝居ではないし、レビューでもない。新ジャンルではないが見せ物として「これはあり」だと思う。劇バカの今人さんのようなちゃんとした(30代?)ダンサーも楽しそうに暴れていたのが面白いし、若い俳優で面白そうな人は何人もいた。が、ちゃんとした台詞も見せ場もないので分からない。何しろ出演者全員が絶頂シーン続きで大変なのだ。息を切らして頑張っているのだ。そこにウソはない。だから、僕は嫌いではないが、これだけ好き勝手にやるのなら、公的資金を使わないでやって欲しい。もちろん自分で頑張ってスポンサーを見つけてやるのはいいのだが、何か、好き勝手、だけど、公的なものに頼るってのが違うと思う。そういう種類のものだ。
 それから、口に含んだ水を飛沫にするのは生理的に耐えられない。人づてに聞いたら、この劇団では良くあるらしい。そうか、それは辛くてもう無理だな。そう思ったわけである。2011年10月26日 池袋BIGTREETHEATER


実券チケット購入していたのだが、披露のため行かず。
「次なる展開を大いに期待」
 ゴジゲンは第6回公演「チェリーボーイ・ゴッドガール」第7回公演「ハッピーエンドクラッシャー」チケットは買って吉祥寺シアターで遠いなあと行かなかった前回を挟んで3回目。2枚チケットを買っていて上記のように行かなかったのだが、結局行く事に。辻修や村上航という名う手の出演者を得て松居ワールドはどうなるのかなと思っていたら、あまり変わらなかった。何しろ設定が「チェリー…」の時と同じく、なぜか集って過ごしているモテない男がひとりのそこそこ可愛い女を部屋から覗いているというかストーカーしているという設定が同じだったからだ。
 もちろん辻修といった役者を得ているのだが、どうもそれは松居の仕掛けではなく、出演者のアイデアによるものだろう。松居ワールドはエチュードで作られる部分も非常に大きいからだ。社団法人日本劇団協議会の制作で作られた今回の芝居。どこもかしこも金も人も無くて困っている中で20代でこれだけの演劇環境を与えてもらった松居さんが次にどのような展開をしてくれるのかを大いに楽しみにしている。
 しかし、辻修ってのは面白い役者だ。改めて思った。
2011年10月20日(平日マチネ)@下北沢駅前劇場



2011年10月9日下北沢駅前劇場
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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