佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 映画 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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監督/佐藤英明 脚本/佐藤英明 君塚良一
出演  浅野忠信 堀北真希 阿部力 木村多江 いしだあゆみ 佐藤浩市 正名僕蔵  粟根まこと 新井浩文 土屋裕一 内藤陳 ほか 



「赤塚不二夫とその時代へのオマージュ」
 この作品の評価は低い。しかし、初監督の佐藤英明は長年の知人である。相当苦労して撮っていた事も知っていたのでつまらないとどうしようと観ないでいた。廻りの評価もあまり良くなかったからだ。例えば、浅野忠信が二枚目すぎて赤塚になりきれていないなんていう噂もきいた。
 しかし、僕は断言する。この作品は面白い。これでいいのだ。
 作品は赤塚と赤塚を生んだ時代のオマージュとして見事に描かれている。浅野も堀北もとてもいい魅力的な演技をしている。画面からは疾走する時代が感じられる。廻りのディテールの扱い方にも愛情が感じられるし、美術もカメラも素晴らしい。映画のラストの20分に疾走感がなくなりホンワカ温かい普通の映画になってしまっているが、佐藤監督の全身全霊を傾けた映画への愛情溢れた作品。メジャー資本で作る新人監督の作品である。これでいいのだ!
2011年3月12日
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監督 ガス・ヴァン・サント
脚本 ダスティン・ランス・ブラック
出演者 ショーン・ペン エミール・ハーシュ ジョシュ・ブローリン

「ひとりの人間を通して見えてくるものが大きい傑作」
 ゲイの活動家の生涯を描いた作品である。作品は、先ずその歴史的な意味合いを記しているわけだが、作品はそこにとどまらない。人間の弱さ強さ、人生の意味合いまでも描いていく。それは、決して押し付けがましいものはないし、僕がそう受け取ったのかもしれないが、一人の人間と廻りの人間を丁寧に描いていくと、そういう映画ができるのだと思った。脚本部門でオスカーを受賞しただけに見事であるが、撮影や70年代の西海岸の美術が見事である。
 実在の登場人物であるハーヴェイミルクのことを知るだけでなく70年代の西海岸、その美術を見せてもらいながら、鑑賞者それぞれの人生を見つめ直す事が出来る。1粒で二度美味しいだけでなく、三度も四度も美味しい映画だ。
 ショーンペンは自らの人生哲学をもってこの作品に挑んでいる。その姿は搭乗人物のハーベィミルクに共通するものがある。だから、脚本以上の見事なものが生まれる。ハリウッドはこういう作品を未だに生みだしている事を忘れてはならない。
 しかし、ガスヴァンサント。素晴らしい。2012年3月11日
ブラック・スワン Black Swan
監督 ダーレン・アロノフスキー
脚本 マーク・ヘイマン/アンドレス・ハインツ/ジョン・J・マクローリン
原案 アンドレス・ハインツ
出演者 ナタリー・ポートマン ヴァンサン・カッセル ミラ・キュニス
音楽 クリント・マンセル 撮影 マシュー・リバティーク



「召し上がれ、ナタリーポートマンの名演技、そして美」
 なるほど、大人気を採ったのが良くわかる。ナタリーポートマンの演技はものすごい。きっと彼女もこの映画の主役ニナのようにこの役に没頭していたのだろう。
 僕も恥ずかしながら演じるということをする。この映画のナタリーポートマンのようでなくても、役に没入してその役と同化する瞬間を感じられたとき、人から褒められる演技をしているものなのだ。ただ、演じるときには役に同化している自分をどこか遠くの自分が見ているものだと思う。
 例えば、この映画をみたのと同時期であれば、ボリショイのアレクサンドロワの踊りに共鳴してしまうのは、多くのダンサーが立っている舞台の中でこのポートマンと同じような部分を一番感じられるのが彼女だったりするからだ。
 そういう意味で、演じるということ、アーチストであることは、ある意味、狂人になのかもしれない。自分を追い込んで高みへと登っていくのは本当に心身ともに大変なことなのだ。だから、追い込むことに快感を覚えるくらいでないと身体も心も持たない。そういう意味でMでないとやっていけないのかもしれないね。いや、SとMの要素がなくてはダメなのかもしれないです。この映画は歴史に残る名作でしょう。ただ、自分の好きな映画ではないです。2012年2月22日 DVD
金子修介監督作品



「若手ががっつり芝居をして…」 
 渡辺プロの若手二枚目が大挙して出ている。この手の作品では、若手の廻りを個性も演技力もある俳優で固めて映画としてみられるものに仕上げるというのが定番のやり方だ。芝居はイマイチな若手俳優と芸達者な人が絡んでも火花は散らない。役割が違うからだ。ところが、金子作品はちょっと違う。逃げない。こうした若手だけで勝負する。金子修介監督は例えば「メサイア」でも若手の演技で勝負した。時にはアレレなこともあったが、この作品は分かりやすく言えばスポコンものの構造だから、これ巧く言ってるのだ。若手の俳優も芸達者な人に頼る事はできない。映画からは若い俳優のいい部分がきちんと伝わってくる。金子監督たいしたものである。
 2012年2月21日 DVD
英国王のスピーチ The King's Speech
監督 トム・フーパー 脚本 デヴィッド・サイドラー
出演者 コリン・ファース ヘレナ・ボナム=カーター ジェフリー・ラッシュ
音楽 アレクサンドル・デプラ 撮影 ダニー・コーエン





「素晴らしい作品だけど、評価高すぎないか?」
 素晴らしい作品だ。話はユニークだし、コリンファースを初めとする現代最高の俳優の演技も見事だし、1930年から40年代を再現した美術も美しい。音楽もセンスがいい。結果アカデミー賞の主要4部門を受賞するという2011年を代表する映画となった。
 非常に高い評価を受けただけに、ものすごく楽しみにしていた。で、見たのだが、それほどではなかったというのが正直な感想なのだ。こういう作品は、映画通の一部にあの映画良かったよな〜と言われるくらいの存在であったほしかった。いわゆる名作とか佳作の作品としてである。アカデミー賞の長い歴史の中で、例えば、アラビアのロレンスといった真の名作と同列には並べられないなという感じなもので。 

2012年2月19日 DVD
監督・脚本: J・C・チャンダー 製作: ザカリー・クイント
出演: ケヴィン・スペイシー、ポール・ベタニー、ジェレミー・アイアンズ、ザカリー・クイント、ペン・バッジリー、サイモン・ベイカー、メアリー・マクダネル、デミ・ムーア、ス タンリー・トゥッチ



「リーマンショックの起こる日を淡々と見せる秀作」
 2008年に起きたリーマンショックはその後もアメリカ経済を苦しめ続けている。そのリーマンショックが起きる前日から起きた日までを淡々と描いた作品。少しでも金融に興味があれば物凄く面白いし、あそこで何が起きたかを知りたければ、この作品は真実であるかどうかは別としても、こういう類いのことが起きた事はほぼ間違いない。見ておいて損はない映画だ。その後、アメリカは変化を求めて彷徨っているが、この作品はまるでギリシア悲劇のように、同じ事はまた起きる。今までも同じようなことが起きて来たと繰り返し台詞で強調される。
 ちなみにタイトルのマージンコールとは、先物など証拠金取引(分かりやすくいうと借金して取引すること)などで損失が一定になったときに、裁定のために必要な資金を入れてくれと催促されること。レバレッジの高い(危険度の高い)取引をしていると、このマージンコールがかかりやすいのだ。
 出演者も豪華であることはお分かり頂けるだろう。会社の重役には映画界の大スターを配し、若手にはテレビドラマで成功した俳優を使っているのも旨いなあ。俳優の演技、それも映画における演技とはこうあるべきだというお手本を見せてくれる。
 それから、この映画の美術は特筆もの。ウォール街で働いた事もある自分が言うのもあれだけれど、あそこら辺の金融機関のビルの内部を緻密に再現している。美術すごい。現代の、それも日本に生きる私たちがぜひとも見ておきたい映画だ。
 80点 2012年2月18日
スピルバーグ作品
オールCG

「映画は消耗品と思いたくない僕にとって」
スピルバーグ監督作品。イフユー…を思わせる洒落たオープニングタイトルから案外楽しく見られました。ヒットしたそうですが、それほどまでは面白くないよな!とも思った。タンタンがバンバン銃をぶっ放すのだけれど、スピルバーグは、子供達がみるこの映画についてどう思ったんだろうね。まあ、DVDも新作貸出しのときでなくていいかも?100円セールになったら借りてみましょう。この映画は消耗品のような作品です。2回3回みたいものではないから、僕はそう映画は好きではない。セルで買わない方がいいですよ。 2012年2月10日
The debt
監督/ジョン・マッデン 出演/ヘレン・ミレン、トム・ウィルキンソン、キアラン・ハインズ、ジェシカ・チャステイン、マートン・ソーカス、サム・ワーシントン、ジェスパー・クリステンセン、他




「何回も繰り返しみたい作品ではないが、スリルとサスペンスを堪能できる」
 2007年のイスラエル映画のリメイクというが、冷戦時代の東ドイツに潜入しナチ戦犯を捜し出そうとするモサドの隊員に隠された秘密。スリルとサスペンスに富んだ映画となっている。せっかくイスラエル以外でリメイクするのだがから、一医師としてナチの過去を隠して生きる元医師の姿をもっと描いて欲しかったなあ。罪の意識をもち、怯え、善良に生きようとしている男を過去の罪で…といった筋書きの方が面白かったのでは?また、ヘレンミレンもいいのだが、彼女の葛藤をもっと深くとも思ったな。もちろん全体的には見応えのある作品になっているのでオススメ。
2012年1月13日
監督 ベネット・ミラー/脚本 アーロン・ソーキン、スティーヴン・ゼイリアン
出演/ブラッド・ピット/ジョナ・ヒル/ロビン・ライト/フィリップ・シーモア・ホフマン

「大変面白いが映画もマネーボール理論で作って欲しかったなあ」
 スター選手の獲得予算がないオークランドアスレチックスが奇跡の20連勝。その裏にあったのは常識破りの数理理論でのチーム編成だった。「ホワイトハウス」「フェイスブック」のアーロンソーキンが脚本を手がけ大変手堅く作品を作り上げていて大変面白い。残念なのは映画はマネーボールの理論のように行かなかったのかということだ。ブラットピットという大スターを使わないでこの面白い映画を作り上げたらスゴかったのにな。いや、もしかしたらピットが大変安いギャランティで出演するといったのかもな…。
2012年1月13日 機内映画
I don't know how shie does it
監督/ダグラス・マクグラス
出演/サラ・ジェシカ・パーカー/オリヴィア・マン(「ビヨンド・ザ・ブレイク」)/セス・マイヤーズ(「サタデー・ナイト・ライブ」)/ピアース・ブロスナン/ケルシー・グラマー



「映画館で観なくていいポップコーン映画」
 これは「SEX&THE CITY」じゃないのかと頭がクラクラした。作品と作り方がそれで、サラジェシカパーカーの自分の対応力以上を引き受けてフラフラしながらこなしていくっていう例の演技も例のパターン。映画ではウォールストリートのホワイトクラスの金融ウーマンということになっているが原作ではロンドンの主婦の話らしい。ピアースブロンソンがせっかくいい味出しているのにちょっと残念な映画。つまらなくはないので、ツタヤの100円セールのときにでも観て僕の言った事を実感してみて下さい。そういう映画です。特にカップルのピロー映画、女の子同志で食事しながら映画にコメントしながら観るのに適した映画です。黙って見つめる映画ではありません。映画を観終わったら観た事も忘れてしまいましょう。10年後には誰も覚えていない映画!それがこれです!
2012年1月13日機内映画
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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