佐藤治彦のパフォーミングアーツ批評 忍者ブログ
自ら演劇の台本を書き、さまざまな種類のパフォーミングアーツを自腹で行き続ける佐藤治彦が気になった作品について取り上げるコメンタリーノート、エッセイ。テレビ番組や映画も取り上げます。タイトルに批評とありますが、本人は演劇や音楽の評論家ではありません。個人の感想や思ったこと、エッセイと思って読んで頂ければ幸いです。
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監督/脚本 ジョン・カーニー
出演 グレン・ハンサード マルケタ・イルグロヴァ
撮影 ティム・フレミング

予告編→ http://youtu.be/I6xIF92OUos
「サンダンスの秀作」
 サンダンスフィルムフェスティバルに出品された作品というのが、頷ける作品である。ダブリンで出会ったエリートではない、むしろ中流でもない男女。でもアートを愛し、人を大切にする2人の交流を描いた映画。何かホントほんわかするなあ。そして、挿入曲がとてもいいのだ。ヘンテコな占い師に頼るのではなくツタヤでこのDVD借りなされ。もしも心が何か温かいものを必要としたら…
2012年3月3日 DVD
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監督/佐藤英明 脚本/佐藤英明 君塚良一
出演  浅野忠信 堀北真希 阿部力 木村多江 いしだあゆみ 佐藤浩市 正名僕蔵  粟根まこと 新井浩文 土屋裕一 内藤陳 ほか 



「赤塚不二夫とその時代へのオマージュ」
 この作品の評価は低い。しかし、初監督の佐藤英明は長年の知人である。相当苦労して撮っていた事も知っていたのでつまらないとどうしようと観ないでいた。廻りの評価もあまり良くなかったからだ。例えば、浅野忠信が二枚目すぎて赤塚になりきれていないなんていう噂もきいた。
 しかし、僕は断言する。この作品は面白い。これでいいのだ。
 作品は赤塚と赤塚を生んだ時代のオマージュとして見事に描かれている。浅野も堀北もとてもいい魅力的な演技をしている。画面からは疾走する時代が感じられる。廻りのディテールの扱い方にも愛情が感じられるし、美術もカメラも素晴らしい。映画のラストの20分に疾走感がなくなりホンワカ温かい普通の映画になってしまっているが、佐藤監督の全身全霊を傾けた映画への愛情溢れた作品。メジャー資本で作る新人監督の作品である。これでいいのだ!
2011年3月12日
読売日本交響楽団 名曲シリーズ
指揮:スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ(読売日響桂冠名誉指揮者)
《オール・ベートーヴェン・プログラム》
ベートーヴェン/序曲〈レオノーレ〉第3番 作品72b
ベートーヴェン/交響曲 第4番 変ロ長調 作品60
ベートーヴェン/交響曲 第5番 ハ短調 作品67〈運命〉

「枯れていないスクロヴァサウンド」
 この日S席なのだが、座席は選べなかったので実質1階3列目(当初は1列目だったが空いていたので自主移動)で聴くはめになってしまいオケの粗さが耳に飛び込んで来てしまう。例えば、コンマスのデヴィッドノーランのバイオリンとそれ以外のバイオリン奏者のフレージングの終わりのタイミングが微妙と違ったり、ボーイングが違ったり、そういう音の結果が耳に飛び込んできてしまう。やはり座席は選ばなくてはならないなと思った。
 スクロヴァチェフスキは既に88歳で、何年か前のザールブリュッケンフィルの来日の時に聞いたのだが、イマイチで、N響で聴く機会はことごとく失ってしまっていて、今年もN響で秋には聞けるのだが、今宵はベートーベンだし聞いておこうと思って出かけた。遅れたためレオノーレ以降から聞いた。
 ベートーヴェンの4番交響曲で上述の音が気になってしまった。管楽器の安定性が欠けるときもあった。しかしスクロヴァの演奏は若い。そして、重々しくどっしりとした感じでもない。そして、この愛すべき4番を爽やかに聞かせてくれた。
 運命の交響曲も基本的に同じだった。終楽章にかけて登頂するように音楽は高まっていき特に4楽章は魂の燃焼とも言える高揚感を与えてくれた。
 スクロヴァの音楽は高齢だからと枯れていない。むしろ若々しさを感じたりする。躍動している。面白いなあ。
 

2012年3月12日@東京オペラシティコンサートホール
監督 ガス・ヴァン・サント
脚本 ダスティン・ランス・ブラック
出演者 ショーン・ペン エミール・ハーシュ ジョシュ・ブローリン

「ひとりの人間を通して見えてくるものが大きい傑作」
 ゲイの活動家の生涯を描いた作品である。作品は、先ずその歴史的な意味合いを記しているわけだが、作品はそこにとどまらない。人間の弱さ強さ、人生の意味合いまでも描いていく。それは、決して押し付けがましいものはないし、僕がそう受け取ったのかもしれないが、一人の人間と廻りの人間を丁寧に描いていくと、そういう映画ができるのだと思った。脚本部門でオスカーを受賞しただけに見事であるが、撮影や70年代の西海岸の美術が見事である。
 実在の登場人物であるハーヴェイミルクのことを知るだけでなく70年代の西海岸、その美術を見せてもらいながら、鑑賞者それぞれの人生を見つめ直す事が出来る。1粒で二度美味しいだけでなく、三度も四度も美味しい映画だ。
 ショーンペンは自らの人生哲学をもってこの作品に挑んでいる。その姿は搭乗人物のハーベィミルクに共通するものがある。だから、脚本以上の見事なものが生まれる。ハリウッドはこういう作品を未だに生みだしている事を忘れてはならない。
 しかし、ガスヴァンサント。素晴らしい。2012年3月11日

モナコ公国モンテカルロ・バレエ団 2012年日本公演<Aプロ> 
(「シェエラザード」「ダフニスとクロエ」「アルトロカント1」
「シェエラザード」
振付:ジャン=クリストフ・マイヨー (ミハイル・フォーキンへのオマージュ)
音楽:ニコライ・A. リムスキー=コルサコフ
美術・衣裳:ジェローム・カプラン
舞台装置部分:レオン・バクスト
照明: ドミニク・ドゥリヨ

愛妾ゾベイダ:小池ミモザ
シャリアール王:ガエタン・モルロッティ
シャゼーマン (王弟):レアルト・デュラク
宦官長:ロドルフ・ルカス ほか

「ダフニスとクロエ」
振付:ジャン=クリストフ・マイヨー
装置、ドローイング:エルネスト・ピニョン=エルネスト
衣裳:ジェローム・カプラン
音楽:モーリス・ラヴェル
アンハラ・バルステロス-ジェローン・ヴェルブルジャン
ベルニス・コピエテルス-クリス・ローラント

「アルトロ・カント 1」
振付:ジャン=クリストフ・マイヨー
音楽:クラウディオ・モンテヴェルディ、ビアジオ・マリーニ、ジョバンニ・ジローラモ・カプスベルガー
衣裳:カール・ラガーフェルド
装置デザイン:ロルフ・サックス
照明:ドミニク・ドゥリヨ

◆上演時間◆ 「シェエラザード」19 : 00 - 19 : 40  休憩20分
「ダフニスとクロエ」20 : 00 - 20 : 35  休憩20分
「アルトロ・カント1」20 : 55 - 21 : 35



「マイヨーの仕掛けるバレエリュスからの旅」
 バレエリュスという言葉は前から聞いていたけれど、それがロシアを意味すると知ったのはつい最近。知らずに使っているのは恥ずかしいね。でも20世紀初頭のバレエといえば、ロシアバレエと同義語に近かったはずだから、それでも感覚的に大きく外れていたわけではないなと納得。それもロシアバレエはディアギレフを頂点とした流行があったわけだ。
 チャイコフスキーのロマンチックなバレエだけでなく、ストラヴィンスキーの春の祭典を、パリで上演し観客から激しい拒否を浴びたバレエの熱い時代。僕はそれがなぜか分からないけれども、バレエリュスはモンテカルロに落ち着くとか。良く分からないけれど。僕の持っていたバレエリュスのイメージは1作目の「シェラザード」に色濃く出ていた。前にこのバレエ団が来日した時に観た、「牧神の午後への前奏曲」を観た時にも何かシャガールの緞帳のイメージがして何か遠い1世紀ほど昔と心がつながる経験をした。
 バレエリュスの肝は何だろう。観客の求めるバレエを裏切り続けることじゃないかと思ったりもする。その裏切りは、観客がお金を払って着飾って、人間の肉体の極みと美を観に来て楽しく幕間をおしゃべりとシャンパンで過ごし、ああ楽しい一晩でしたと終わらせない凄みがある。突きつけるのだ。いま自分が観ているものは何だろう。分からない、でも惹かれる。今までとは違う。ああ、知性と感性が引きちぎられる!こういう体験をさせることがバレエリュスの肝ではないかと思うのだ。
 何の根拠もないけどね。
そんなことを感じさせる物語バレエ「シェラザード」のあとの2本は、後者になるに連れて、物語性は失われ、単純にエロチズムとか美しい身体の線と動きとか、そういった従来の自分の経験した感性で観られる作品から遠ざかっていく。面白いなあと思った。
 最後の作品は衣装がカールラガーフェルド。トランスジェンダーな衣装で普通の美意識を根底から揺さぶりかける。美しいが従来のそれとは違う。でもダンサーの動きは魅力的だ。でも、古典のダンスで観て来たそれとも違う。
 マイヨーはそういう旅をこの3作品で観客にさせた。そして、空間を舞台表面からジャンプしてのせいぜい3メートルというのからも解放した。視線は踊りを含めた舞台空間全体に均等に振り向けられ、美しい照明は人間の肉体のモーメントを見事になぞってみせた。こんな美しいバレエの照明はみたことがない。
 常に革新的で分からないけれども魅力的。きっとそれがバレエリュスだろう。
 パリオペラ座やロイヤルバレエ、ボリショイや東京バレエ団を観るときのようにスターダンサーの絶技を観に行くわけはないし、そのようなアイコンもこのバレエ団にはいないけれども、そこにはマイヨーの仕掛けるもっともっと深く幅の広い仕掛けがあった。
 2012年3月7日@東京文化会館

13時開演キャスト
オーロラ姫:佐伯知香 デジレ王子:長瀬直義
リラの精:渡辺理恵 カラボス:矢島まい
カタラビュット(式典長):高橋竜太
王さま:永田雄大 王妃さま:小川ふみ
<プロローグ・第1幕>
乳母:森彩子 優しさの精:村上美香 やんちゃの精:岸本夏未 気前よさの精:大塚怜衣 のんきの精:森志織 度胸の精:阪井麻美
4人の王子:梅澤紘貴、杉山優一、柄本弾、森川茉央
オーロラの友人:上沼千尋、河谷まりあ、飯田鈴実、政本絵美
<第2幕>
宝石の精 金:縫谷美沙 銀:大塚怜衣 ダイヤ:森彩子 サファイア:河谷まりあ フロリナ王女と青い鳥:吉川留衣、梅澤紘貴 白い猫と長靴をはいた猫:森志織、吉田蓮 赤ずきんとおおかみ:阪井麻美、安田峻介 シンデレラとフォーチュン王子:村上美香、杉山優一 白雪姫:上沼千尋

主役の二人

16時開演キャスト(13時と違うキャストのみ記載)
オーロラ姫:二階堂由依 デジーレ王子:柄本弾
カタラビュット:松下裕次 王様:佐藤瑶 王妃:松浦真理絵
4人の王子:梅澤紘貴、永田雄大、杉山優一、森川茉央
オーロラの友人:小川ふみ、上沼千尋、河谷まりあ、政本絵美
<第2幕> 白雪姫:小川ふみ
 主役の二人

「若いダンサーの踊る喜びにあふれた舞台」
 かぶりつきのピット席が何と3000円。90分だというので昼夜行く事に。同じプロダクションのバレエを同じ日に2回も観るという事は今後もないだろう。自分でも驚き。配られた配役表のタイムテーブルをみると開演から終演まで確かに95分であったが、実際は1時間50分かかった。でも全く飽きなかった。同じ作品を2回も見た理由は簡単。配役がダブルだから。見比べてみたかった。
 「眠れる森の美女」というバレエだがそんなに多く観ているわけではない。最初にみたのが1995年ミラノスカラ座バレエ団(確かオペラの来日の前後だったかな?)の初来日(←NBS主催;瀑)。衣装がゴージャスすぎてクラクラした。ゴージャスなのはそのキャスト。何しろオーロラ姫がアレッサンドラフェリ、デジーレ王子がマニュエルルグリ、それに騎士役でロベルトボッレも出ていた。バレエを知らない人でも知ってるスター勢揃い。ああ、スゴかったなあーー。それが初見だからね。それから、10年以上前にロンドンでロイヤルオペラの公演(ロイヤルオペラが改築中の時)で観ている。記憶にあるのはこのくらいだ。まあ、そんな人間の戯れ言として読んでもらいたい。
 今回の公演は子どものためのバレエと副題がついていて、眠れる森の美女のハイライトに加えて、狂言廻し役がつく。それが式典長のカタラビュット。これが良かった。13時の回の高橋竜太はトークも旨い。笑いのポイントも随所に作って子どもも大人も大喜び。16時の松下裕次はコンパクトにやる。語尾の滑舌がちょっと良くないのが残念。僕はこの役にもっと踊るシーンを作ってもらいたかったなあと思ってみた。
 しかし、このプロジェクトは素晴らしい。いくつか理由があるが、ちょっと生真面目に書かせてもらうと…。
 その1、最高でも5000円(大人)2500円(子ども)という低廉な価格で、ファミリー向けのバレエ入門として最適なものに作っていること。これを観てバレエを始める子どももいるだろうし、価格が安いから初めてバレエを観る大人にも非常に受け入れやすい。美術は緞帳から書き割りなんだけれども、それが現代のなんて言うかパソコンで作ったファンタジーのような絵柄でこれが子どもたちにはとても受け入れやすいと思った。
 緞帳
 衣装はチャコットの協力を受けているらしいが、非常に美しい。
上演時間は短いし、分かりやすくするために工夫もしている、2幕の祝宴の踊りには、おとぎ話の登場人物に置き換える、着ぐるみ着用などしている。しかし、踊りはさすがの東京バレエ、いいものを作るということに徹している。
 その2、バレエを始める人が出てくれば、バレエの観客動員は増えるだろうし、バレエ学校の入学者も増えるから主宰のNBSにとってプラス。
 その3、キャスティングを観れば分かるが、バレエ団の若手を次々と抜擢しているので実力を磨くチャンス。ソロを踊って自分を表現するチャンスの増加につながる。バレエ団全体の実力向上につながるはず。
 他にもいろいろとあるだろうが、これはいろんな意味で素晴らしい。好循環が生まれていく可能性があるプロジェクトなのだ。
 書き割りだけのセットだが美しい。
 
 ところで、子どもこそ一番難しい観客である。面白くなければすぐ騒ぐ泣く走り回る。ところが、今日観た2回の公演とも踊りが始まると子どもたちは集中して舞台に見入っていた。大声で騒ぐ子ども、泣く子どもは一人もいなかった。素晴らしい。それは東京バレエ団が子どもだからと手を抜かずに与えられた状況で最高のものを提供しているからだ。もちろん、これが生のオーケストラだったらなあとか思うけれども、先ずは母親と二人の子どもで1万円で観られる!これを維持するためには、音楽が録音でもしかたないだろう。

 本来はこのような公演は税金も投入して運営している新国立劇場バレエ団がやらなくてはならないことである。それを民間の東京バレエ団がやってくれることに謝意を示して欲しい。そして、他のバレエ団にとっても、これがどれほどバレエの未来に大きな意義を持っているかも分かって欲しい。

 出演者についてはカタラビュットについては既に述べたが、それ以外もリラの精の渡辺理恵がノーブルの極地の美しさを披露し観ているだけで嬉しい。何でこの人をもっとでかい役で使わないのかなあ。カラボス(悪い魔法つかい)の矢島まいがやりすぎない演技でとても良かった。この人は欧米人のような恵まれたスタイルの人で、踊りに華があるんだよなあ。もっと、もっと踊りを観たかった。
 長靴をはいた猫の森志織(のんきの精、も)、吉田蓮(1幕では招待客も)も良かった。吉田の跳躍は観ていて気持ちいいし、猫の仕草も丁寧。踊る喜びを舞台に発散させていた。青い鳥のパドドゥの吉川瑠衣と梅沢紘貴も良かった。憂いをもった役作りである。
 主役はちょっと差があった。
 オーロラ姫は、佐伯知香が丁寧に踊っていた。技術がホントにしっかり身に付いている。そのあとの二階堂バージョンと明らかな差になってしまったのが、例の1幕のバラのアダージョのシーン。ここは華麗な曲に乗りながら、4人の求婚者の前でくるくる廻ったり、握手したり、バラをもらったりする、まあそれだけのシーンなのだが、難易度の高いシーンとして有名だ(今だから言える)。僕が最初にこのバレエを観た時に記憶に残ったのがここでもあるのだ。というのも、バラもらったりするだけなのに、会場中からでかい拍手がきた。何で?と考えてみたら確かにスゴいシーンだねと思ったわけ。
 ここは、ハープが流れ、美しいメロディが流れている間、オーロラ姫は4人の王子に支えられながら廻ったりして優雅に踊り、バラの花束を受け取っていく。その時の格好が大変ンなんですよ、オーロラが片足でつま先立ちをしたまま、もう片方の脚は膝を直角に曲げて後ろに出したまま、ぐらぐらしない。顔も笑顔という。。。いわゆる、ポワント・アチチュードを続けるんだけど、特に腕を差し出し4人の王子の手を順に取る動作が見せ場なんですね。それも握手とバラの花をもらうのと2回あるから。すごい格好で微動だにしないだけでも大変なのに、それに加えて腕は動かさなくちゃいけないという、至難中の至難。それを佐伯の方は、アンオーでやった。アンオーというのは、両手を上にあげて丸くする奴です。それを、いちいちアンオーから握手、アンオーから握手って、もうこれスゴいんですよ。子どもなんか観たって分かんないのに、偉いなあ。
 それがね、二階堂さんの方は、もう求婚者の手から離れるだけでもつらそうで、はい、つぎ!はい、次!って辛そうだった。 佐伯とペアを組む長瀬直義もピケターン(廻りながら移動するやつ)、グランジュデ(脚を拡げてジャンプするやつ)、あとなんて言うか分かんないけど熊川哲也でおなじみのジャンプしながら回転し舞台を一回りするやつ。全部お見事。例えば、ピケターンなんかでは、加速度をつけてくれるわけ。これが観ている側は興奮するんだよなあ。長瀬はノーブルな感じだし腐女子の人気があるのが分かる。
 柄本、二階堂組について書かせてもらうと。二階堂さんは佐伯さんよりも恵まれた体つきをもっている。スタイルが抜群なのだ。日本人離れというか人間離れしている。顔小さすぎ!美しい手足長過ぎ!というくらいのもので、それはこの世のものとは思えないくらい美しい。そして、柔らかくしなやかな肉体、優雅でダイナミックな動き。こうした天賦の才を持っている。ロンデジャンプ(脚を上まであげるやつ)グランパドゥシャ(開脚ジャンプ)なんかホントに美しい。優美でねえ。ぜひ、もっと精進して技術を向上してもらいたいなあと思うのだ。
 彼女を最初にみたのは、東京バレエ団の代表作である「ザ・カブキ」。それは、このブログにも書いてあるから読んで欲しい。その時も相手役というか、由良介という主役をやっていたのが、20歳になったかならないかの柄本弾だ。この人を最初に観た時に、先に書いたミラノスカラ座バレエ団で観たロベルトボッレを思い出した。日本人離れした風貌に放つオーラはスターの素質抜群。今回も踊ることを心底愛しているのが分かった。特に音楽を良く聴いている。イチイチ音楽と肉体がシンクロし決まっていく。キメキメに決めていく。これはスゴい。観ている方は気持ちがいい。しかし、例えば長瀬が見せてくれるピケターンの加速度はない。フェッテアラセンアゴール(脚出しながらくるくる回る奴)もね(笑)。柄本ってジャンプ力はあるし華もあるし、何だろうなあ、ジョルジュドンとか、ジルロマンとかが取り憑かれた様に踊る感じをもってもらいたいなあ…と、日本なら後藤晴雄が時おりそんな感じである。
 東京バレエ団の若手のダンサーをあのミラノスカラ座バレエ団の来日公演の時の印象と比べているわけで、でも東京バレエ団はもはや世界のトップクラスのバレエ団なんで、よろしくお願いします。すいません、俺バレエオタクでないので、専門用語なんかは、調べながら書いたので間違ってたらごめんさい。
 2012年3月3日@目黒パーシモンホール
『スケベの話』バットとボール編 ブルドッキングヘッドロック
作・演出◇喜安浩平
出演◇西山宏幸 篠原トオル 寺井義貴 川村紗也 佐藤みゆき ほか
「勝つためだ。我慢しろ・・・。」甲子園まであと一勝。勝利と引き換えの禁欲が、男たちを静かに狂わせる・・・。


「クリーンヒット!」
 前回の作品がとても苦手だったので、僕が以前観たブルはたまたま面白かったのかなと思いつつ観に行った。今回も苦手だったら最後だなあと思いつつ出かけたのだ。
 入口で上演時間が2時間20分と聞いた時、ブルーになってしまったくらいだ。
 ほぼ全員が30歳以上であるにも関わらず、登場人物はひとりを除いて全部高校生の役柄だ。それをやりきってしまう面白さ。そして、この年齢だからこそ表現できるものなのかもしれないなあと思うくらい緻密でハートのある演技を出演者がして、そこには演劇だからこそ起きる空気があった。
 真ん中に舞台があり、それを挟むような舞台構成。シンプルな舞台に、シンプルな照明。役者が気持ちが高校生にならないと観てられない代物だったろう。別に大きな事件が起きるわけでもない。甲子園に出場する地方の野球チームが、さて甲子園に出て野球をする。その宿舎での話。そこで起きる日常を描いているだけだ。
 喜安氏は出演せず作演出に徹した。それは成功だったといえるだろう。とても繊細な演出でこれは自らも出演していてはなかなか難しい。役者の関係性を緻密に作り上げていた。それに応えた役者も観客を楽しませることに成功している。舞台を挟む形なので向こう側の観客の表情がどんどん緩んでいくのが分かる。ああ、演劇はこうして観客を幸せにするのだなあと思った。
 出演者はみな出色の出来だ。あまり褒めすぎるのも悔しいからこの辺にしておく。
2012年3月4日(日)ソワレ@サンモールスタジオ
  

 友人が事務局に入ったのでお祝いで、読売日本交響楽団 2012/13 名曲シリーズの年間会員になりました!まあ、全部はいけそうもありませんが、今のところ以下のものには行く予定。日程が赤字ものものはほぼ確実にいきます。

第549回サントリーホール名曲
5月10日(木) 19:00
指揮=下野竜也
ヴァイオリン=クリストフ・バラーティ
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
≪下野竜也・ドヴォルザーク交響曲シリーズⅦ≫
ドヴォルザーク:交響曲 第2番 変ロ長調 作品4

第550 回サントリーホール名曲
6月13日(水) 19:00

指揮=ゲルト・アルブレヒト
ピアノ=若林顕
ブラームス:ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 作品83
ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調 作品68

第552回サントリーホール名曲
9月23日(日) 18:00
指揮=スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ

クラリネット=リチャード・ストルツマン
ウェーバー:歌劇「魔弾の射手」序曲
スクロヴァチェフスキ:クラリネット協奏曲(日本初演)
ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」(デ・フリーヘル編)

第553回サントリーホール名曲
10月18日(木) 19:00
指揮=シルヴァン・カンブルラン
合唱=新国立劇場合唱団
ラヴェル:バレエ音楽「マ・メール・ロワ」(全曲)
ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」(全曲)

第554回サントリーホール名曲
11月24日(土) 18:00
指揮=ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス

≪マエストロ・セレクション・ポピュラー作品集≫
グリーグ: 「ペール・ギュント」第1組曲から「朝」「アニトラの踊り」
シューベルト:軍隊行進曲 ニ長調 D.733
ストラヴィンスキー :サーカス・ポルカ
J.シュトラウスII:ワルツ「南国のばら」作品388
シベリウス:悲しきワルツ 作品44-1
ワーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
チャピ:サルスエラ「人さわがせな娘」前奏曲
アルベニス:「スペイン組曲」から「グラナダ」
ファリャ:「火祭りの踊り」
ヴェルディ:歌劇「椿姫」第3幕への前奏曲
マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲
ビゼー: 「アルルの女」組曲から「メヌエット」「ファランドール」


第557回サントリーホール名曲
2月12日(火) 19:00
指揮&ヴァイオリン=ライナー・ホーネック
ロッシーニ:歌劇「泥棒かささぎ」序曲
シューベルト:劇音楽「ロザムンデ」から「間奏曲第2番」「バレエ音楽第2番」
ベートーヴェン:ロマンス第2番 へ長調 作品50
ドヴォルザーク:スラブ舞曲 作品72-2
ブラームス:ハンガリー舞曲 第1番
J.シュトラウスII:喜歌劇「こうもり」序曲
J.シュトラウスII:エジプト行進曲 作品335
ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・マズルカ「遠方から」作品270
J.シュトラウスII:ワルツ「加速度」 作品234
J.シュトラウスII&ヨーゼフ・シュトラウス:ピチカート・ポルカ
ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・シュネル「休暇旅行で」 作品133
J.シュトラウスII:ワルツ「南国のばら」 作品388
J.シュトラウスII:トリッチ・トラッチ・ポルカ 作品214


第558回サントリーホール名曲
3月18日(月) 19:00
指揮=シルヴァン・カンブルラン

マーラー:交響曲 第6番 イ短調 「悲劇的」

作:鈴木 聡
演出:鈴木裕美

松金よね子/岡本麗/田岡美也子
加納幸和/井之上隆志/津村知与支

「鈴木聡の傑作。生きる喜び、観劇の喜びを再認識させてくれるマスターピース」
 ラッパ屋の鈴木聡は現存する日本における最高の喜劇作家である。僕はその鈴木の最高傑作のひとつではないかと思う。この作品の日常の会話や生活の中にペーソスを感じさせる手法は抜群である。生きることの面白さとおかしさ、それも笑いだけでなく可笑しさをにじませる作品だった。これこそ傑作である。こういう作品に出会いたいがために劇場に通うのだし、こういう作品を自分でも書いてみたいから僕は書くのである。
 ちょっと無理気味な設定もあるのだが、観客をぐいぐい引き込んでいくのは3人の女優の力量のみせどころである。上手い、いい味、魅力がある。うーーん、何といっていいか分からない。3人とも素晴らしいのだが、例えば松金よね子さんは、テレビや他の舞台では、もっとハチャメチャに役を作り上げる。それは、メインであってももっと分かりやすく登場人物を見せる。それは、メインであっても短時間にプレゼンテーションしなくてはいけないことが多いからなのかもしれないが、今回の作品では登場人物に本当に丁寧にじっくり向き合って作っている。いつもと比べれば、表情は無表情のことが多い。だけれども、なんてことはない時の表情の見事さ。間合いの取り方も、いつもの爆笑喜劇の時と違って慎重なのである。ただ笑いが取れればいいなんて間合いでやらない。なんていうか、喜劇の間合いでなく、日常にありそうな間合いで笑いを取るのである。その抑えた演技の見事さ。2時間10分の積み重ねで最後の20分でお客をきちんと終着点に連れて行く。もちろん、そこまで、ずーーーーっと楽しませ続けてくれる。いやはや見事。
 大好きな井之上隆志さんは、ちょっとやり過ぎだろ!と思ってみていたら、15分もするとそれを自然と受け入れてしまう。この人の腕はもうスゴすぎる。こういう俳優たちをハリウッド映画は使って欲しい。
 4人の喜劇俳優は本当に本当に見事のひとことだ。もちろんあとの二人もいいんだけど。4人が良すぎてねえ。こういう演技をみると、僕はやっぱり喜劇俳優の技量のスゴさを感じてしまうのだ。再演があったら、何を差し置いても観に行かれることを強く薦める。2012年2月28日@座・高円寺
ロマンサー
作・演出◇蓬莱竜太
出演◇古山憲太郎 小椋毅 西條義将 佐藤めぐみ 石田えり
「連鎖スル命。連鎖スル宿命。」を背負いながら、前のめりで生きる人間たちを描くということです。

 「役者の演技がすごかった」
 松永玲子と石田えり。この二人の女優対決を面白く観た。そして、千葉哲也の旨いこと。うまいこと。台詞廻しもちょっとした視線の送り方も、身体から発散される空気すべてが超一流だ。松永玲子のテンションの高さは日本だけでとどめておくのは本当に勿体ないなあと思った。
 芝居自体は好きなものではなかった。テンポは遅いというよりも重たい。人間関係は深めていくというよりもとどまり繰り返す。冒頭から、その会話はいわゆる芝居の台詞じゃね?とか思ったほど。それはありえない!とか思ってしまって、苦手な作品だと思った。
 正直、中野ザ・ポケットでやっていた頃の作品の方が圧倒的に好きだな。
 でもモダンスイマーズの俳優は今の方が圧倒的にいい。例えば古山憲太郎とかは、双数姉妹でテロリストの役をやっていたころから存在感があると思っていたが、芝居もうまくなったし、あの千葉哲也にもひかない。スゴい。
 まあ、これだけ作品への感想を直接表明するのも、蓬萊君は既に岸田戯曲賞ももらって世間の評価が物凄く高いからだ。羨ましいですな、若くて好きなことできて。2012年2月27日(月)@シアタートラム
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プロフィール
HN:
佐藤治彦 Haruhiko SATO
性別:
男性
職業:
演劇ユニット経済とH 主宰
趣味:
海外旅行
自己紹介:
演劇、音楽、ダンス、バレエ、オペラ、ミュージカル、パフォーマンス、美術。全てのパフォーミングアーツとアートを心から愛する佐藤治彦のぎりぎりコメントをお届けします。Haruhiko SATO 日本ペンクラブ会員
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